エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
できることなら嫌いになりたいのに、この期に及んでも愛おしい気持ちしか湧かない。
眠っている彼に『大好きです』と告げるくらいなら許されるだろうか。
そう思い立って小さく息を吸い込んだ瞬間――ベッドサイドのテーブルで、彼のスマホが短く震えた。
瑛貴さんは寝返りすら打たない。かなり熟睡しているようなのでホッとしたけれど、どうしても気になってスマホの通知欄にちらっと目をやった。
【箕島由香 来週お会いできるのを楽しみに……】
箕島……お父様からのメッセージにあった、見合い相手の名だ。
――見るんじゃなかった。
後からそう思ったところで、もう遅い。彼に愛された体の隅々から醜い嫉妬が噴き出してきそうな錯覚を抱き、私は思わず自分の体をかき抱いた。
足早に寝室を出る直前、涙目でベッドの方を振り返る。
「再会なんて、しなければよかった……」
泣き出すのは何とかこらえたが、弱々しく震える声で、そう呟いた。