エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
唐突なプロポーズに揺れてはいけない



 まだまだ残暑の厳しい九月。私は田園風景の広がる静岡県の片隅にいた。

「残業、ノルマなし。女性が働きやすい職場です」

 日曜日の朝刊に折り込まれていた求人チラシを手に、ブツブツ呟く。気になった募集には蛍光ペンで大きく丸印をつけ、また次のチラシを手に取った。

 鎖骨まで伸びたストレートヘアは低い位置でただ結んだだけ。メイクもろくにしないので、コンプレックスの童顔も隠せていない。

 動きやすいフレアパンツにTシャツを身につけた服装にお洒落要素はひとつもなく、我ながら女子力が低いと思う。

 もっとも、育児中なのだから仕方がないと、それほど気にしてはいないけれど。

「あっ、託児所アリ? って、看護師の募集か……」

 毎週のようにこの作業を繰り返しているが、条件に合う職場を見つけるのは難しい。スマホでも検索しているが似たような結果である。

 私ひとりならどんな仕事でも構わないのだけれど……。

「はぁいママ、カレー、でちたよ」

 求人チラシを見ていた視界に、突如小さな手がおもちゃのオムライスを差し出してきた。オムライスはきちんと皿にのせてあり、スプーンも添えてある。

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