エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
胡桃はそれほどパパという存在にこだわりを持っていないようだけれど、その日からキッチンで遊ぶのがお気に入りになった。
あれこれストーリーを作って楽しそうにままごとを演じる胡桃の姿を見ていると、まるで小さな頃の自分を見ているようで温かい気持ちになる。
「あらあら、楽しそうねぇ胡桃ちゃん」
窓を開け放っていた縁側の方から、叔母さんの優しい声が聞こえてきた。
顔を上げると、エプロンに腕カバーを付けた農作業スタイルの春枝叔母さんが、田んぼから帰ってきたところだった。
日焼けした顔に浮かんだ汗を、首にかけたタオルで拭っている。
「叔母さん、おかえりなさい。叔父さんは?」
「直売所に新米を持って行ったよ。麻人くんが手伝ってくれるって言うから、あたしは先に帰らせてもらったの。暑くて敵わないからね」
麻人くんというのは、叔父夫妻と同じく近所で米農家を営んでいる湯浅さんのお宅の次男。
私よりふたつ年上ながら、気さくで話しやすいお兄さん的存在だ。