エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「それに亜椰ちゃんは、やっぱり家具に関わる仕事がしたいでしょう? やっぱり自分の好きなものに触れられる仕事を、じっくり探した方がいいわ。東京に比べたらずいぶん少ないだろうけど」
麦茶を飲み干した叔母さんが手を伸ばし、胡桃のままごとキッチンを撫でる。
胡桃の父親である男性からの贈り物だとは話していないけれど、叔母は勘のいい人だ。私にとってそれが特別な家具であることを、なんとなく察している。
「いえ、今は業界を絞らず、胡桃との生活でうまくやれそうな時間帯や条件で探しています。家具はもちろん好きですけど、趣味程度にネットカタログを眺めるだけでもじゅうぶん楽しいですし」
つとめて明るい声を出し、叔母に笑いかけた。
瑛貴さんが現在どうしているか調べたことはないが、おそらく今でも紫藤インテリアで活躍しているだろう。
直接関わることはありえないにしろ、同じインテリア業界の仕事につくのは億劫だ。
「そう……。なんだかもったいない気もするけど、胡桃ちゃんのことを考えたらそれがいいのかもね。しつこいようだけど、焦る必要はないよ」
「わかっています。ありがとう、春枝叔母さん」
「さて、じゃあおやつにしようか。胡桃ちゃん、梨食べる?」
「たべるー!」