エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「行っちゃおうかな、北欧」
漠然と思い立ち、口に出してみる。不思議とワクワクしている自分がいた。
北欧家具は好きだが、実際に訪れたことはない。海外へ買い付けに行くときも、予算を考えて近場で済ませてばかりだった。
再就職してすぐは仕事を覚えるのに必死で旅行できる時間なんてきっとない。だったらこの機会を逃すのはもったいないかも……。
でも、北欧と言っても広い。行くとしたらどこにしよう?
考えを巡らせているうちに脳裏をよぎったのは、なぜか幼い頃に見たままごとキッチンの記憶。
叔父さんの店にずっと置いてあったがなかなか買い手がつかず、幼い頃はもっぱら私のおもちゃだった。
木製のやわらかい風合いで、引き出しにはトナカイのマークが彫られていて……私もすっかり遊ばなくなった小学校高学年の頃、それが著名な家具職人のものだと気づいたお客さんが、高額で買っていったと聞いている。
「確か……エリアスさん?」
当時叔父が口にしていた職人の名前を呟き、スマホで検索してみる。
すると、『エリアス・ティッカ』というフィンランド人の木工家具職人がヒットした。