エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
「瑛貴……さん?」
信じられない思いで、なんとかそれだけ問いかけた。
目の前に立つ長身の男性。どう見ても、彼は胡桃の父親――紫藤瑛貴さんだ。
くっきりとした二重に美しいアーモンド形の目、まっすぐ通った鼻筋、理知的な薄い唇。
あの頃より髪は少し伸びただろうか。耳の上まである前髪は左右にスッキリと分けられ、彼の端整な顔立ちを引き立てている。
「やっと、見つけた」
ゆっくりと紡がれた低い声に、心臓がきゅっと締め付けられる。焦げ茶色の双眸に捕らわれて、身動きが取れない。
「どう、して……」
「十日前、仕事で近くを通った時に乗っていた車が故障して、ここのご主人に助けてもらったんだ。安全な場所まで車を移動させてくれただけでなく、代わりの車が手配できるまで自分の家で待てばいいと、お茶までご馳走してくださった」
彼がこの家に? まったく心当たりがない。
でも、十日前ならもしかしたら……私が自治会の防犯パトロールに出かけていた間かもしれない。