エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
中から現れたのは、六本の爪がセンターストーンの大きなダイヤモンドを支える、シンプルでありながら豪奢な指輪。眩いダイヤの煌めきに戸惑うばかりだ。
「亜椰。きみに、結婚を申し込む」
「えっ?」
結婚……って言った? 耳を疑うセリフに顔を上げる。
瑛貴さんは既婚者ではないの? だってあの頃、彼には見合い話があったはずだ。
さりげなく視線を走らせた彼の左手薬指に、指輪は嵌まっていない。
動揺して見上げた瑛貴さんの瞳にふざけた色はなく、私の姿をしっかり映していた。
「ママぁ、まだ~?」
その時、部屋の方から胡桃の声が聞こえて、ハッと我に返る。
胡桃と彼が顔を合わせないよう、早く追い返さないと……!
「もうすぐ終わるからお部屋で待ってて~!」
胡桃の「わかった~」という声を聞いてから、目の前の瑛貴さんにペコッと頭を下げた。
「とにかく、今日のところは帰ってください。お願いします」
「……今日のところは。つまり、また来ても構わない?」
「誰もそんなこと言ってません! ここへはもう二度と――」
私の反論を無視して、瑛貴さんはリングケースをしまい、代わりにポケットからスマホを取り出した。