エリート御曹司はママになった初恋妻に最愛を注ぎ続ける
この地域には、自治会の他に二十代から三十代の若い人たちで構成された青年会という組織がある。
強制加入ではないので私は入っていないけれど、麻人さんは会の中心メンバーのひとりで、季節ごとのお祭りやイベント、清掃活動などに積極的に参加している。
しかし年々加入する人が減っているため、メンバーの確保に苦労していると以前麻人さんに聞いたことがある。それで私を誘いに来たのかもしれない。
「……いや、そんな話ならわざわざ新沼さんたちに席を外してもらわないよ」
「あっ、そうか。じゃあなんのお話だろう。とりあえずお茶でも淹れますね。少し待ってください」
「いや、いらない」
麻人さんが畳から腰を上げ、目の前に立つ。その顔が深刻そうに見え、なにかあったのだろうかと心配になる。
「麻人さん……?」
「一昨日この家に来ていた男……あれ、誰なんだ?」
「えっ?」
もしかして瑛貴さんのこと? 麻人さんがどうして知っているんだろう。
「新沼さんちの前に見慣れない車が停まってたから、悪いけど玄関の近くまで行って様子をうかがってたんだ。そしたら、開けっ放しの玄関で亜椰ちゃんとそいつが話してて……プロポーズまでしてたから気になって」