生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
14.リリアとルーカス
「失礼いたします」
ユーグ様に通され、私が客間に入ると、ルーカス様は上半身を起し、枕を背もたれにしながらも資料を読まれていた。
「お前か」
ルーカス様は私を横目で見ると、直ぐに手元の資料に目線を戻した。
「もう起きて大丈夫なんですか?」
「問題ない」
私の問に冷たい言葉が帰ってくる。
何か怒ってる……?
あの時、優しいルーカス様を垣間見たのは幻だったのかな?
「お食事取られてないんですね」
「お前には関係無い」
資料から目を離さずに、冷たい返事だけが返ってくる。ルーカス様がこちらを見たのは私が部屋に入って来た一瞬だけ。
私はルーカス様の側に駆け寄って、近くで訴える。
「食べないと御身体に障ります!」
「うるさい」
ルーカス様はそう言うと、ベッドサイドのキャビネットから小瓶を取り出して、キャップを開けて小中の液体を飲みだした。
ポーション?
先程のユーグ様の話が思い浮かばれ、じいっと瓶を見つめる。
確かに、私が作ったポーションを入れていた小瓶。
『リヴィア』お手製の薬は、魔力により、全て虹色の瓶に百合の花を形どったキャップが施されていたから、間違いない。……でも。
「それ、中身ポーションじゃないですよね?」
中身がポーションじゃないことは、見ればわかった。
「流石聖女というところか?」
液体を飲み干したルーカス様は冷たい笑みでこちらを見た。
あ、やっとこっち見た。
「これは薬師に作らせた滋養強壮の薬だ」
「え、わざわざそれに入れて?」
ルーカス様の答えに、思わず指を指して呆れた言葉が出てしまった。
「これが何か知っているのか?」
ジロリと私を睨むルーカス様。
あ、しまった。リリアはリヴィアの瓶のことなんて知らないか。
「私も聖女なので、その瓶から聖女様の力を感じただけです」
慌てて適当な答えを言えば、ルーカス様は「そんなものか」と興味なさそうに言うと、また資料に目をやられてしまった。
「残っていたリヴィア様のポーションを全て飲まれてしまったのですか?」
気にせず私も質問を続けると、ルーカス様はまたこちらを見て答えた。
「私が聖女のポーションを私物化する訳ないだろう! これは私がリヴィアにもらった最後の物だ」
確かに、リヴィアはルーカス様に何度かポーションを渡していた。一緒に魔物討伐に出ることも多かったから。
「最後の……それに移し替えて……」
ルーカス様はその最後の瓶を大事に大事に取っていた。え、何してんの?
「わ、悪いかっ!」
私のちょっと引いた目線に気付き、ルーカス様の冷たい表情が崩れた。
あ、ルーカス様戻って来た。
瓶を握りしめると、ルーカス様はまたそれをベッドサイドに置いた。
空っぽの瓶は虹色に輝いていて、『リヴィア』の魔力がまだ少し宿っているようだった。
そっか、瓶の魔力が薬師の滋養強壮の薬を高めていたのね。『リヴィア』はルーカス様を守ってくれていた。
私は瓶に向かって、「ありがとう」と心の中でお礼を言った。
すると、急に瓶から光が弾け飛んだ。その眩しさに、私もルーカス様も顔をしかめて目をつぶった。
光が収まり、瓶を見ると、虹色の瓶は透明な物に変わり、『リヴィア』の魔力も失せていた。
「お前、何をした!」
ルーカス様が瓶を取り上げ、私を睨む。
「な、何もしてませんよ! ただ、瓶に宿っていたリヴィア様の微量の魔力が尽きたみたいです」
綺麗な整った顔で睨まれると、迫力がある。私は慌てて説明をした。
「今までリヴィアが私を守ってくれていたと?」
「さっきの一杯で終わりだったみたいですが……」
瓶を愛おしそうに見つめたルーカス様に私は容赦なく終わりを告げる。
「リヴィア……」
まだ瓶を見つめるルーカス様。
『リヴィア』をこんなにも愛してくれていたんだと目の当たりにし、胸がキュウと締め付けられる。
ここからは『リリア』に託されたってことかしら。
ぎゅうっと拳を握り、私はルーカス様に言った。
「もうリヴィア様は守ってくれません! お薬だけじゃなくて、きちんとした食事を取ってください」
するとルーカス様は一瞬泣きそうな顔をして。
「うるさい! 私は死にたいんだ!」
「ルーカスさ…」
顔を覆うルーカス様に思わず手をのばすと、私の手は彼に囚われてしまった。
「でも自分では死ねない! だからあの時死ねたら良かったのに、お前が、私を助けた……っ!」
ルーカス様の悲痛な声が部屋に響いた。
「リヴィア様が命をかけて守った国を守れるのはルーカス様だけなんですよ?」
辛そうなルーカス様に私は優しく話しかける。でもルーカス様の表情は段々と歪んでいった。
「リヴィアのいない世界なんて私には意味が無い! でもリヴィアが命をかけて守った国も、自身の命も! 自分で壊すことは出来ない!! しかし、リヴィアだけが死に、他の者がのうのうと生きているのも許せない…! だが、聖女が怠け、国が滅びるのなら、それも良い! そして国を守って死ぬなら、リヴィアもきっと許してくれる……!」
ぐちゃぐちゃなルーカス様の気持ち。
国を守りたい気持ちと、何もかも無くなってしまえという気持ちが入り混じって、ルーカス様は苦しんでいた。
それが叫びになって吐き出された。
全ては『リヴィア』への愛からだってわかってる。わかってるけど……
「情けない!!」
私はいつの間にか、ベッドに飛び乗り、ルーカス様の顔を両手でこちらに向かせていた。
ユーグ様に通され、私が客間に入ると、ルーカス様は上半身を起し、枕を背もたれにしながらも資料を読まれていた。
「お前か」
ルーカス様は私を横目で見ると、直ぐに手元の資料に目線を戻した。
「もう起きて大丈夫なんですか?」
「問題ない」
私の問に冷たい言葉が帰ってくる。
何か怒ってる……?
あの時、優しいルーカス様を垣間見たのは幻だったのかな?
「お食事取られてないんですね」
「お前には関係無い」
資料から目を離さずに、冷たい返事だけが返ってくる。ルーカス様がこちらを見たのは私が部屋に入って来た一瞬だけ。
私はルーカス様の側に駆け寄って、近くで訴える。
「食べないと御身体に障ります!」
「うるさい」
ルーカス様はそう言うと、ベッドサイドのキャビネットから小瓶を取り出して、キャップを開けて小中の液体を飲みだした。
ポーション?
先程のユーグ様の話が思い浮かばれ、じいっと瓶を見つめる。
確かに、私が作ったポーションを入れていた小瓶。
『リヴィア』お手製の薬は、魔力により、全て虹色の瓶に百合の花を形どったキャップが施されていたから、間違いない。……でも。
「それ、中身ポーションじゃないですよね?」
中身がポーションじゃないことは、見ればわかった。
「流石聖女というところか?」
液体を飲み干したルーカス様は冷たい笑みでこちらを見た。
あ、やっとこっち見た。
「これは薬師に作らせた滋養強壮の薬だ」
「え、わざわざそれに入れて?」
ルーカス様の答えに、思わず指を指して呆れた言葉が出てしまった。
「これが何か知っているのか?」
ジロリと私を睨むルーカス様。
あ、しまった。リリアはリヴィアの瓶のことなんて知らないか。
「私も聖女なので、その瓶から聖女様の力を感じただけです」
慌てて適当な答えを言えば、ルーカス様は「そんなものか」と興味なさそうに言うと、また資料に目をやられてしまった。
「残っていたリヴィア様のポーションを全て飲まれてしまったのですか?」
気にせず私も質問を続けると、ルーカス様はまたこちらを見て答えた。
「私が聖女のポーションを私物化する訳ないだろう! これは私がリヴィアにもらった最後の物だ」
確かに、リヴィアはルーカス様に何度かポーションを渡していた。一緒に魔物討伐に出ることも多かったから。
「最後の……それに移し替えて……」
ルーカス様はその最後の瓶を大事に大事に取っていた。え、何してんの?
「わ、悪いかっ!」
私のちょっと引いた目線に気付き、ルーカス様の冷たい表情が崩れた。
あ、ルーカス様戻って来た。
瓶を握りしめると、ルーカス様はまたそれをベッドサイドに置いた。
空っぽの瓶は虹色に輝いていて、『リヴィア』の魔力がまだ少し宿っているようだった。
そっか、瓶の魔力が薬師の滋養強壮の薬を高めていたのね。『リヴィア』はルーカス様を守ってくれていた。
私は瓶に向かって、「ありがとう」と心の中でお礼を言った。
すると、急に瓶から光が弾け飛んだ。その眩しさに、私もルーカス様も顔をしかめて目をつぶった。
光が収まり、瓶を見ると、虹色の瓶は透明な物に変わり、『リヴィア』の魔力も失せていた。
「お前、何をした!」
ルーカス様が瓶を取り上げ、私を睨む。
「な、何もしてませんよ! ただ、瓶に宿っていたリヴィア様の微量の魔力が尽きたみたいです」
綺麗な整った顔で睨まれると、迫力がある。私は慌てて説明をした。
「今までリヴィアが私を守ってくれていたと?」
「さっきの一杯で終わりだったみたいですが……」
瓶を愛おしそうに見つめたルーカス様に私は容赦なく終わりを告げる。
「リヴィア……」
まだ瓶を見つめるルーカス様。
『リヴィア』をこんなにも愛してくれていたんだと目の当たりにし、胸がキュウと締め付けられる。
ここからは『リリア』に託されたってことかしら。
ぎゅうっと拳を握り、私はルーカス様に言った。
「もうリヴィア様は守ってくれません! お薬だけじゃなくて、きちんとした食事を取ってください」
するとルーカス様は一瞬泣きそうな顔をして。
「うるさい! 私は死にたいんだ!」
「ルーカスさ…」
顔を覆うルーカス様に思わず手をのばすと、私の手は彼に囚われてしまった。
「でも自分では死ねない! だからあの時死ねたら良かったのに、お前が、私を助けた……っ!」
ルーカス様の悲痛な声が部屋に響いた。
「リヴィア様が命をかけて守った国を守れるのはルーカス様だけなんですよ?」
辛そうなルーカス様に私は優しく話しかける。でもルーカス様の表情は段々と歪んでいった。
「リヴィアのいない世界なんて私には意味が無い! でもリヴィアが命をかけて守った国も、自身の命も! 自分で壊すことは出来ない!! しかし、リヴィアだけが死に、他の者がのうのうと生きているのも許せない…! だが、聖女が怠け、国が滅びるのなら、それも良い! そして国を守って死ぬなら、リヴィアもきっと許してくれる……!」
ぐちゃぐちゃなルーカス様の気持ち。
国を守りたい気持ちと、何もかも無くなってしまえという気持ちが入り混じって、ルーカス様は苦しんでいた。
それが叫びになって吐き出された。
全ては『リヴィア』への愛からだってわかってる。わかってるけど……
「情けない!!」
私はいつの間にか、ベッドに飛び乗り、ルーカス様の顔を両手でこちらに向かせていた。