生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
17.噂のお相手は10歳
「何だ、また来たのか……」
あれから。
私はルーカス様のお食事の度にポーションを持参して現れた。
「ルーカス様がポーション無しでも食べられるようになるまで来ますよ!」
ルーカス様もすっかり諦めた顔で、私の言うがまま食べてくれるようになった。もちろんまだ、『リヴィア印』のポーション入りだけど。
私が食事の度に突撃するものだから、ついには、客間で一緒に食事をするようにまでなった。
「一緒に食べて行けば良いだろう」
とルーカス様が言ってくれたのだ。何だかんだ優しいルーカス様。
思えば、冷たいながらも私の相手をしっかりとしてくれていた。
「何を笑っている」
私がニマニマしながらルーカス様を見ていたら、ムスッとしたルーカス様に言われた。
「何でもないでーす」
子供らしくそう答えれば、ルーカス様は「変なやつ」と言って、優しく笑った。
その微笑みにドキリとしてしまう。
そうして二人で食事をしていると、凄い勢いのノックでアレクが入って来た。
「ルーカス、どういうことだ!!」
「お父様?」
凄い剣幕で入って来たアレクに、ルーカス様も私もポカンとしてしまう。
「リリアはまだ十歳だぞ!!」
「へ? 私?」
「まてまて、何の話だ」
どうも話が見えない。するとアレクは、私たちを見比べて、情けない声で言った。
「お前たち、いつの間に婚約したんだ!!」
えええええーーーーーー!
私もルーカス様も初耳の話。アレクの話を整理すると、こうだ。
聖女である私が毎日かかさずルーカス様の部屋にお見舞いに行き、心を通い合わせた二人は、ついには二人きりで食事をするようになった、と近衛隊の間で瞬く間に噂になっているらしい。
そして、その噂はフォークス領中にも広がり、いつの間にか、私とルーカス様が婚約したとまで飛躍しているらしい。
第一王子派の近衛隊員たちは、聖女との婚約に喜んでいるとか。マジですか。
「じゃあ、ただの噂になんだな?」
とりあえず、事の顛末を説明した私たちに、アレクは、ホッとした顔を見せた。
「何で誤解されるようなこと……」
「こいつが勝手に押しかけて来たんだ」
「あ、ひどい! ルーカス様!」
呆れた顔でルーカス様を見るアレクに、ルーカス様は飄々とした顔で答えるので、私も思わず声をあげる。
「お前たち……いつの間にそんなに仲良く……」
アレクが何だか遠い目をしているけど、放っておこう。
「まさか十歳の子供と噂されるなんて」
ルーカス様はクックックと笑っている。
子供ですみませんね。まあ、若いお妃様を娶ることはよくあるかもしれないけど、十歳児を婚約者に据えるなんて、ロリコンも良いところだ。下手したらルーカス様の評判下がらない?
「じゃあ、否定して……」
「いや、このままで良い」
立ち上がろうとするアレクをルーカス様が制する。
え?何で?
私もアレクも、ルーカス様の言葉に驚いて彼を見た。
「このままだと、王都まで噂は広がるぞ!」
「そのほうがお前たちの派閥にも良いことだろう」
ルーカス様の言葉にアレクはグッと黙ってしまった。しかし。
「でもリリアはまだ十歳だぞ……」
「第二王子派を黙らせるまでだ。そうしたら自由にしてやる。どのみち、聖女であるからには政治に利用されるんだ。私の手元に置いておいた方が安心だろう」
アレクとルーカス様は私を置いてきぼりにして会話を続けていた。
「黙らせるって……散々好きにさせておいて……今さらやる気になったのか?」
「リヴィアが命をかけた国を守らなくてどうする」
「………」
何だか、ルーカス様の表情が変わった気がする。昔のルーカス様とアレクを見ているようだった。
「何がお前を変えた」
真剣な顔のアレクに、ルーカス様はクッと笑って答えた。
「生意気な聖女様にたきつけられたからな」
「どうせ生意気ですよ!」
意地悪な顔をして笑うルーカス様に、私は頬を膨らませた。
「本当に仲良くなったんだな、お前たち……」
アレクがまた遠い目をして言った。そして。
「第二王子派の耳に入れば、リリアも危険に晒される」
「守ると誓おう」
アレクの真剣な問にルーカス様も真剣に答えた。それが義務的なものだとしても、私はドキリとしてしまう。
「本気なんだな」
「ああ」
しばらく二人は見つめ合うと、アレクが先に折れた。
「わかった。リリアは俺も守る。ただし! お前だろうと、リリアは嫁にやらない。約束通り、リリアを自由にさせるな?」
「約束しよう」
はあ〜、とアレクはその場でため息をついた。
「ああー、フリでもリリアが婚約なんて……」
親バカアレクは今にも泣きそうだ。
「手は出さないので安心してください、お父上」
「当たり前だ! てかお父上、やめろ!!」
さっきまでの真剣な空気はどこへやら。二人はじゃれ合い始めてしまった。
昔を見ているようで、何だか懐かしい気持ちになり、フフ、と笑うと、アレクが心配そうに聞いてきた。
「リリアはそれで良いのかい? フリとは言え、王太子に婚約破棄されることになるけど……」
娘が傷物になることをとアレクは心配してくれているのだろう。普通、第一王子の婚約者になれるなんて喜ぶ所だけど。
「聖女としての功績を残していけば、きっと大丈夫です。それに、ルーカス様も悪いようにしないでしょう?」
アレクにニッコリと笑ってみせ、ルーカス様の方を見れば、彼はニヤリと笑っていた。
「やっぱりお前は生意気だ。だが、私も子供に現を抜かしていたとは思われたくない。全てが終われば、全てを明らかにしようじゃないか」
その言葉に、アレクも安心したようだ。
それなら、婚約解消された女、にならないもんね。ルーカス様も「時間をかける気は無い」と言っている。
結界の問題と、この国の跡継ぎ問題。どちらも並行していかなければならない。
少し不安はあるものの、まあ、やるしかないもんね、と私は前向きに思うことにした。
あれから。
私はルーカス様のお食事の度にポーションを持参して現れた。
「ルーカス様がポーション無しでも食べられるようになるまで来ますよ!」
ルーカス様もすっかり諦めた顔で、私の言うがまま食べてくれるようになった。もちろんまだ、『リヴィア印』のポーション入りだけど。
私が食事の度に突撃するものだから、ついには、客間で一緒に食事をするようにまでなった。
「一緒に食べて行けば良いだろう」
とルーカス様が言ってくれたのだ。何だかんだ優しいルーカス様。
思えば、冷たいながらも私の相手をしっかりとしてくれていた。
「何を笑っている」
私がニマニマしながらルーカス様を見ていたら、ムスッとしたルーカス様に言われた。
「何でもないでーす」
子供らしくそう答えれば、ルーカス様は「変なやつ」と言って、優しく笑った。
その微笑みにドキリとしてしまう。
そうして二人で食事をしていると、凄い勢いのノックでアレクが入って来た。
「ルーカス、どういうことだ!!」
「お父様?」
凄い剣幕で入って来たアレクに、ルーカス様も私もポカンとしてしまう。
「リリアはまだ十歳だぞ!!」
「へ? 私?」
「まてまて、何の話だ」
どうも話が見えない。するとアレクは、私たちを見比べて、情けない声で言った。
「お前たち、いつの間に婚約したんだ!!」
えええええーーーーーー!
私もルーカス様も初耳の話。アレクの話を整理すると、こうだ。
聖女である私が毎日かかさずルーカス様の部屋にお見舞いに行き、心を通い合わせた二人は、ついには二人きりで食事をするようになった、と近衛隊の間で瞬く間に噂になっているらしい。
そして、その噂はフォークス領中にも広がり、いつの間にか、私とルーカス様が婚約したとまで飛躍しているらしい。
第一王子派の近衛隊員たちは、聖女との婚約に喜んでいるとか。マジですか。
「じゃあ、ただの噂になんだな?」
とりあえず、事の顛末を説明した私たちに、アレクは、ホッとした顔を見せた。
「何で誤解されるようなこと……」
「こいつが勝手に押しかけて来たんだ」
「あ、ひどい! ルーカス様!」
呆れた顔でルーカス様を見るアレクに、ルーカス様は飄々とした顔で答えるので、私も思わず声をあげる。
「お前たち……いつの間にそんなに仲良く……」
アレクが何だか遠い目をしているけど、放っておこう。
「まさか十歳の子供と噂されるなんて」
ルーカス様はクックックと笑っている。
子供ですみませんね。まあ、若いお妃様を娶ることはよくあるかもしれないけど、十歳児を婚約者に据えるなんて、ロリコンも良いところだ。下手したらルーカス様の評判下がらない?
「じゃあ、否定して……」
「いや、このままで良い」
立ち上がろうとするアレクをルーカス様が制する。
え?何で?
私もアレクも、ルーカス様の言葉に驚いて彼を見た。
「このままだと、王都まで噂は広がるぞ!」
「そのほうがお前たちの派閥にも良いことだろう」
ルーカス様の言葉にアレクはグッと黙ってしまった。しかし。
「でもリリアはまだ十歳だぞ……」
「第二王子派を黙らせるまでだ。そうしたら自由にしてやる。どのみち、聖女であるからには政治に利用されるんだ。私の手元に置いておいた方が安心だろう」
アレクとルーカス様は私を置いてきぼりにして会話を続けていた。
「黙らせるって……散々好きにさせておいて……今さらやる気になったのか?」
「リヴィアが命をかけた国を守らなくてどうする」
「………」
何だか、ルーカス様の表情が変わった気がする。昔のルーカス様とアレクを見ているようだった。
「何がお前を変えた」
真剣な顔のアレクに、ルーカス様はクッと笑って答えた。
「生意気な聖女様にたきつけられたからな」
「どうせ生意気ですよ!」
意地悪な顔をして笑うルーカス様に、私は頬を膨らませた。
「本当に仲良くなったんだな、お前たち……」
アレクがまた遠い目をして言った。そして。
「第二王子派の耳に入れば、リリアも危険に晒される」
「守ると誓おう」
アレクの真剣な問にルーカス様も真剣に答えた。それが義務的なものだとしても、私はドキリとしてしまう。
「本気なんだな」
「ああ」
しばらく二人は見つめ合うと、アレクが先に折れた。
「わかった。リリアは俺も守る。ただし! お前だろうと、リリアは嫁にやらない。約束通り、リリアを自由にさせるな?」
「約束しよう」
はあ〜、とアレクはその場でため息をついた。
「ああー、フリでもリリアが婚約なんて……」
親バカアレクは今にも泣きそうだ。
「手は出さないので安心してください、お父上」
「当たり前だ! てかお父上、やめろ!!」
さっきまでの真剣な空気はどこへやら。二人はじゃれ合い始めてしまった。
昔を見ているようで、何だか懐かしい気持ちになり、フフ、と笑うと、アレクが心配そうに聞いてきた。
「リリアはそれで良いのかい? フリとは言え、王太子に婚約破棄されることになるけど……」
娘が傷物になることをとアレクは心配してくれているのだろう。普通、第一王子の婚約者になれるなんて喜ぶ所だけど。
「聖女としての功績を残していけば、きっと大丈夫です。それに、ルーカス様も悪いようにしないでしょう?」
アレクにニッコリと笑ってみせ、ルーカス様の方を見れば、彼はニヤリと笑っていた。
「やっぱりお前は生意気だ。だが、私も子供に現を抜かしていたとは思われたくない。全てが終われば、全てを明らかにしようじゃないか」
その言葉に、アレクも安心したようだ。
それなら、婚約解消された女、にならないもんね。ルーカス様も「時間をかける気は無い」と言っている。
結界の問題と、この国の跡継ぎ問題。どちらも並行していかなければならない。
少し不安はあるものの、まあ、やるしかないもんね、と私は前向きに思うことにした。