生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
21.王都の結界
「王都周辺の結界は修復されているのですね」
王宮を離れた私たちは、再び馬車に乗り込み、王都を移動していた。
これからアレクと一緒に住む家に向かうのに、ルーカス様が送ってくれている。
「そのことだが……お前に見て欲しい」
「どういうことです?」
「杞憂に済めば良いだけの話だ」
私の問に、ルーカス様はそれ以上何も言わなかった。
そして、家に行く前にルーカス様に言われるままある目的地まで寄り道することになった。
「ここは……」
ルーカス様に連れて来られた場所は、王都の入口、結界の要の場所。そしてーー
「リヴィアが命を落とした場所だな」
私の肩に乗るトロワが呟いた。
そう。魔王と対峙し、『リヴィア』が命を落とした、最期の戦いの場所。
広場には祭壇が設けられ、沢山の花で飾られていた。
『リヴィア』に対する物だと、すぐにわかった。十年経っても忘れずに花を捧げてくれる人たちの存在に、胸が締め付けられた。
「ここはリヴィアが命をかけて国を守った場所だ」
ルーカス様は広場を見渡し、『リリア』に説明をしてくれた。
そしていつの間にか用意されていた花束を持ち、ルーカス様は祭壇に置いた。『リヴィア』印でもある、百合の花束だった。
私は胸をぎゅうと掴み、色んな想いを奥に押しやる。
「どうしてここに?」
震えそうな手を押さえつけ、私はルーカス様に質問をした。
「リリア! 『リヴィア』の結界の上から、新しい結界がかけられている!」
先に気付いたのはトロワだった。
「え?」
改めて落ち着いてこの広場を見てみると、『リヴィア』の張った結界は健在だった。でも。
「あれ? 何だろう? 結界の上に薄い…結界?」
私はすぐに上から薄い膜のように結界が重ねてあるのに気付いた。
「やはり気付いたか」
ルーカス様は片方の口元を上げて私を見た。
「どういうことですか?」
「王都周辺の結界は、あの聖女が張っていると言っていただろう」
確かに、ソフィー様は結界を張っていると言っていた。
でも、これが結界?何だか申し訳程度に薄く重ねてあり、役割を果たしているとは思えない。
「王都中の結界を回ったが、私にはリヴィアの結界の気配しか感じない」
ルーカス様は私をじっと見ると、更に続けた。
「お前から見て、あの女の結界はどうだ?」
真剣な顔のルーカス様の問に、私も正直に答えた。
「リヴィア様の結界の上に薄く膜を張っているだけのように思います。今はリヴィア様の結界で守られていますが、この結界に亀裂が入れば、膜のようなソフィー様の結界に意味は無いかと」
「やはりそうか……」
私の見解にルーカス様は納得したようだった。
「第二王子派は王都さえ守っていれば良いという考えの奴らばかりだからな」
側に控えていたアレクも難しい顔で会話に入って来た。
「リヴィアの結界を利用しているだけのパフォーマンスだな」
「あの聖女にそこまでの能力は無いと?」
「ああ」
貴族主情主義の第二王子派は、王都さえ守られていれば良いという考えらしい。そして、ソフィー様に強い力は無く、『リヴィア』の結界の上に膜の結界を張っているだけ。
王都を守っているというパフォーマンスをすることにより、貴族たちの支持を得る。力のあるものにしか結界は見えないので、証明する人もいない。
そうして持ち上げられたジェイル様と、遊んでばかりの聖女様。第二王子派にとっては都合が良い二人だろう。
ルーカス様とアレクの話を聞いて、この根深い後継者問題に、私は頭が痛くなった。
「とりあえず、ここは大丈夫ですが、私が結界を張り直しておきますか?」
「それはダメだ」
そんな提案をしたら、ルーカス様に却下されてしまった。
「あの女の結界に手を出すと目を付けられる。それに、君の力を自分の功績にしかねない。やっかいだ」
確かに証拠を主張出来ない上に、面倒くさいことになるのは避けたい。
今は『リヴィア』のおかげで結界も保たれているので、王都はとりあえず大丈夫だろう。
「当面は、王都以外の結界修復ですね?」
「そうだな。今の所、報告が来ているのはフォークス領だけだ。何か起きる前に動きたいな」
ルーカス様は今後のことを私と話し合うと、再び祭壇に向き直った。
「リヴィア、目を背けていてごめん。君の想いをこれからは無駄にしない」
泣きそうな顔で祭壇に微笑むルーカス様の横顔に、胸がきゅう、と痛んだ。
私はルーカス様の想いを知ってもなお、『リヴィア』であることを隠している。
「ごめんね、ルーカス」
「? 何か言ったか?」
『リヴィア』の終焉の地。
ルーカス様に聞こえない声で、私は最初で最後のはずの『リヴィア』としての想いを口にした。
王宮を離れた私たちは、再び馬車に乗り込み、王都を移動していた。
これからアレクと一緒に住む家に向かうのに、ルーカス様が送ってくれている。
「そのことだが……お前に見て欲しい」
「どういうことです?」
「杞憂に済めば良いだけの話だ」
私の問に、ルーカス様はそれ以上何も言わなかった。
そして、家に行く前にルーカス様に言われるままある目的地まで寄り道することになった。
「ここは……」
ルーカス様に連れて来られた場所は、王都の入口、結界の要の場所。そしてーー
「リヴィアが命を落とした場所だな」
私の肩に乗るトロワが呟いた。
そう。魔王と対峙し、『リヴィア』が命を落とした、最期の戦いの場所。
広場には祭壇が設けられ、沢山の花で飾られていた。
『リヴィア』に対する物だと、すぐにわかった。十年経っても忘れずに花を捧げてくれる人たちの存在に、胸が締め付けられた。
「ここはリヴィアが命をかけて国を守った場所だ」
ルーカス様は広場を見渡し、『リリア』に説明をしてくれた。
そしていつの間にか用意されていた花束を持ち、ルーカス様は祭壇に置いた。『リヴィア』印でもある、百合の花束だった。
私は胸をぎゅうと掴み、色んな想いを奥に押しやる。
「どうしてここに?」
震えそうな手を押さえつけ、私はルーカス様に質問をした。
「リリア! 『リヴィア』の結界の上から、新しい結界がかけられている!」
先に気付いたのはトロワだった。
「え?」
改めて落ち着いてこの広場を見てみると、『リヴィア』の張った結界は健在だった。でも。
「あれ? 何だろう? 結界の上に薄い…結界?」
私はすぐに上から薄い膜のように結界が重ねてあるのに気付いた。
「やはり気付いたか」
ルーカス様は片方の口元を上げて私を見た。
「どういうことですか?」
「王都周辺の結界は、あの聖女が張っていると言っていただろう」
確かに、ソフィー様は結界を張っていると言っていた。
でも、これが結界?何だか申し訳程度に薄く重ねてあり、役割を果たしているとは思えない。
「王都中の結界を回ったが、私にはリヴィアの結界の気配しか感じない」
ルーカス様は私をじっと見ると、更に続けた。
「お前から見て、あの女の結界はどうだ?」
真剣な顔のルーカス様の問に、私も正直に答えた。
「リヴィア様の結界の上に薄く膜を張っているだけのように思います。今はリヴィア様の結界で守られていますが、この結界に亀裂が入れば、膜のようなソフィー様の結界に意味は無いかと」
「やはりそうか……」
私の見解にルーカス様は納得したようだった。
「第二王子派は王都さえ守っていれば良いという考えの奴らばかりだからな」
側に控えていたアレクも難しい顔で会話に入って来た。
「リヴィアの結界を利用しているだけのパフォーマンスだな」
「あの聖女にそこまでの能力は無いと?」
「ああ」
貴族主情主義の第二王子派は、王都さえ守られていれば良いという考えらしい。そして、ソフィー様に強い力は無く、『リヴィア』の結界の上に膜の結界を張っているだけ。
王都を守っているというパフォーマンスをすることにより、貴族たちの支持を得る。力のあるものにしか結界は見えないので、証明する人もいない。
そうして持ち上げられたジェイル様と、遊んでばかりの聖女様。第二王子派にとっては都合が良い二人だろう。
ルーカス様とアレクの話を聞いて、この根深い後継者問題に、私は頭が痛くなった。
「とりあえず、ここは大丈夫ですが、私が結界を張り直しておきますか?」
「それはダメだ」
そんな提案をしたら、ルーカス様に却下されてしまった。
「あの女の結界に手を出すと目を付けられる。それに、君の力を自分の功績にしかねない。やっかいだ」
確かに証拠を主張出来ない上に、面倒くさいことになるのは避けたい。
今は『リヴィア』のおかげで結界も保たれているので、王都はとりあえず大丈夫だろう。
「当面は、王都以外の結界修復ですね?」
「そうだな。今の所、報告が来ているのはフォークス領だけだ。何か起きる前に動きたいな」
ルーカス様は今後のことを私と話し合うと、再び祭壇に向き直った。
「リヴィア、目を背けていてごめん。君の想いをこれからは無駄にしない」
泣きそうな顔で祭壇に微笑むルーカス様の横顔に、胸がきゅう、と痛んだ。
私はルーカス様の想いを知ってもなお、『リヴィア』であることを隠している。
「ごめんね、ルーカス」
「? 何か言ったか?」
『リヴィア』の終焉の地。
ルーカス様に聞こえない声で、私は最初で最後のはずの『リヴィア』としての想いを口にした。