生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
24.近衛隊へ3
「まさかアレクの娘が聖女だったとは」
ジロジロと不遠慮に見てくるイスランに、私はムッとする。
「うちのリリアは凄いんだ!」
そんなイスランに気付かないのか、アレクは親バカを爆発させていた。
「リリア様はあのルーカス殿下の魂を呼び戻した方ですからね」
何故か自慢げに言うユーグ様。
ちょっと待って。私、近衛隊の間でそんなこと言われてんの?
「ふん、今更やる気になられても遅い。それにいつまで持続するか」
イスランは何故か冷めた目で答えた。
「ジェイル殿下もルーカス殿下にも俺は期待しない」
イスランは『リヴィア』にも突っかかるような皮肉屋だったけど。今は本心で言っているようだった。彼にも一体何があったのだろう。
この十年で、はっきり言って人間関係が拗れすぎている。
「そう言うな、イスラン。ルーカスがやる気になったのは良いことじゃないか」
「ふん、第一王子派のお前には良いことだろうな」
「どちらにも属さないお前だからこそ、俺は信頼しているよ」
アレクとイスランの会話から、イスランはどちらの派閥でも無いらしい。
少し安心していると、イスランがこちらを見て言った。
「おい、俺は聖女として仕事をしてくれれば、婚約だの何だのはどうでも良い。責務を果たしてくれるなら、俺も仕事をするまでだ」
十歳相手に凄むイスラン。うーん、大人気ない。
「もちろんです。聖女としてこの力を存分に奮いたいと思っています」
私はニコリとイスランに笑顔を向けて言うと、彼はフン、とそっぽを向いてしまった。
「リヴィア様以上の聖女なんていないだろう」
そう言い残すと、イスランは部屋を出て行ってしまった。
「あちゃー、あいつ初恋拗らせてるなあ」
「は、初恋?!」
アレクが、サラッと凄いことを言った。
「副隊長は何かあればリヴィア様はあーだった、こーだった、って話しますからね。リヴィア様を好きだったのバレバレですよ」
ユーグ様も続けてサラッと言う。
……知らなかった。『リヴィア』にもいつも皮肉ばっかり言っていた彼が。
「まあ、フォークス領の話をあいつも知っているし、あれでもリリアのことを認めているんだよ?」
私の頭をポンと撫で、アレクが言った。
「そうなんですか……」
『リヴィア』の時もそうだったのだろうか。皮肉の後ろに隠れた彼の気持ち。
「わっかりやすいですよねえ」
ユーグ様が笑って言ったけど、私には全く持ってわからない。わかりづらすぎる。
「ラヴェル副隊長は、第二王子派ではないんですよね?」
「そうだよ。何か気になることがあった?」
アレクに念を押すように私は尋ねた。
「ルーカス様のご体調をユーグ様に簡単に話していたみたいなので」
私はチラリとユーグ様を見た。彼は、あちゃー、という顔をしている。
「どういうことだ? ユーグ、勝手にリリアに話したのか?」
ジロリとアレクに睨まれたユーグ様は、バツが悪そうに答えた。
「リリア様ならいっかなーと思いまして。だって、皆、リリア様なら殿下を変えてくれるんじゃないかって期待していました。だから俺も話したわけで……」
「だからって勝手に……」
「でも実際に上手くいきましたよね?」
はあー、とため息をついたアレクはこちらを見て話した。
「リリア、ユーグはイスランの腹心だ。だから色んな事情を知っているんだ。そこは安心して欲しい」
「そうだったんですか……」
アレクの説明に安心しつつも、ユーグ様の真意には驚いた。そんな私を他所に、ユーグ様は私を覗き込んで、ニカッと笑った。
「やっぱり、リリア様って聡明ですよね! 自分が話したことを危惧されていたなんて!」
「そうだろう、そうだろう。うちのリリアは賢いんだ……って、お前が原因でリリアがルーカスと噂されるようになったんじゃないか?!」
「はは、自分もああまでなるとは」
親バカアレクは、娘を褒められて上機嫌になったと思ったら、すぐにユーグ様に怒って詰め寄った。
まあ、確かにユーグ様に教えてもらったことで、ルーカス様との距離は縮まったけど、私は私の意思でルーカス様を何とかしたい、って思ったんだよなあ。
「大丈夫です! 婚約を破棄された後は自分が責任取りますから」
「だから、リリアは誰にもやらん!!」
ユーグ様がまた冗談を言い出したので、私は苦笑いをする。
「ユーグ様にだって婚約者がいるんじゃないですか?侯爵家のご嫡男なんですから」
「自分は三男なので、いないですよ。気楽なもんです。でも騎士は続けるので、リリア様に不自由はさせませんよ」
軽口を叩くユーグ様に私は適当に笑顔で返した。この人懐っこい笑顔で冗談を言うユーグ様に本気で返すと、疲れると悟ったのだ。
「それと、リリア様、敬語は無しでって言いましたよね? あと、様もいらないです。ユーグで!」
「わかった、ユーグ……」
すっかり抵抗することを諦めた私は、彼の言う通りにすると、ユーグは満足そうに太陽のような笑顔をわたしに向けた。
人当たり良くて、本当に変な人。
でもアレクのお墨付きだし、これから護衛に付いてくれるので、仲良くするに越したことはない。
良い人でむしろ良かったのかも!イスランみたいな人だとやりづらいもの。
そうして秘密を共有する面々と挨拶を済ませた私は、明日からの本格的な聖女業をアレクとユーグと打合わせをしてから帰路についた。
ジロジロと不遠慮に見てくるイスランに、私はムッとする。
「うちのリリアは凄いんだ!」
そんなイスランに気付かないのか、アレクは親バカを爆発させていた。
「リリア様はあのルーカス殿下の魂を呼び戻した方ですからね」
何故か自慢げに言うユーグ様。
ちょっと待って。私、近衛隊の間でそんなこと言われてんの?
「ふん、今更やる気になられても遅い。それにいつまで持続するか」
イスランは何故か冷めた目で答えた。
「ジェイル殿下もルーカス殿下にも俺は期待しない」
イスランは『リヴィア』にも突っかかるような皮肉屋だったけど。今は本心で言っているようだった。彼にも一体何があったのだろう。
この十年で、はっきり言って人間関係が拗れすぎている。
「そう言うな、イスラン。ルーカスがやる気になったのは良いことじゃないか」
「ふん、第一王子派のお前には良いことだろうな」
「どちらにも属さないお前だからこそ、俺は信頼しているよ」
アレクとイスランの会話から、イスランはどちらの派閥でも無いらしい。
少し安心していると、イスランがこちらを見て言った。
「おい、俺は聖女として仕事をしてくれれば、婚約だの何だのはどうでも良い。責務を果たしてくれるなら、俺も仕事をするまでだ」
十歳相手に凄むイスラン。うーん、大人気ない。
「もちろんです。聖女としてこの力を存分に奮いたいと思っています」
私はニコリとイスランに笑顔を向けて言うと、彼はフン、とそっぽを向いてしまった。
「リヴィア様以上の聖女なんていないだろう」
そう言い残すと、イスランは部屋を出て行ってしまった。
「あちゃー、あいつ初恋拗らせてるなあ」
「は、初恋?!」
アレクが、サラッと凄いことを言った。
「副隊長は何かあればリヴィア様はあーだった、こーだった、って話しますからね。リヴィア様を好きだったのバレバレですよ」
ユーグ様も続けてサラッと言う。
……知らなかった。『リヴィア』にもいつも皮肉ばっかり言っていた彼が。
「まあ、フォークス領の話をあいつも知っているし、あれでもリリアのことを認めているんだよ?」
私の頭をポンと撫で、アレクが言った。
「そうなんですか……」
『リヴィア』の時もそうだったのだろうか。皮肉の後ろに隠れた彼の気持ち。
「わっかりやすいですよねえ」
ユーグ様が笑って言ったけど、私には全く持ってわからない。わかりづらすぎる。
「ラヴェル副隊長は、第二王子派ではないんですよね?」
「そうだよ。何か気になることがあった?」
アレクに念を押すように私は尋ねた。
「ルーカス様のご体調をユーグ様に簡単に話していたみたいなので」
私はチラリとユーグ様を見た。彼は、あちゃー、という顔をしている。
「どういうことだ? ユーグ、勝手にリリアに話したのか?」
ジロリとアレクに睨まれたユーグ様は、バツが悪そうに答えた。
「リリア様ならいっかなーと思いまして。だって、皆、リリア様なら殿下を変えてくれるんじゃないかって期待していました。だから俺も話したわけで……」
「だからって勝手に……」
「でも実際に上手くいきましたよね?」
はあー、とため息をついたアレクはこちらを見て話した。
「リリア、ユーグはイスランの腹心だ。だから色んな事情を知っているんだ。そこは安心して欲しい」
「そうだったんですか……」
アレクの説明に安心しつつも、ユーグ様の真意には驚いた。そんな私を他所に、ユーグ様は私を覗き込んで、ニカッと笑った。
「やっぱり、リリア様って聡明ですよね! 自分が話したことを危惧されていたなんて!」
「そうだろう、そうだろう。うちのリリアは賢いんだ……って、お前が原因でリリアがルーカスと噂されるようになったんじゃないか?!」
「はは、自分もああまでなるとは」
親バカアレクは、娘を褒められて上機嫌になったと思ったら、すぐにユーグ様に怒って詰め寄った。
まあ、確かにユーグ様に教えてもらったことで、ルーカス様との距離は縮まったけど、私は私の意思でルーカス様を何とかしたい、って思ったんだよなあ。
「大丈夫です! 婚約を破棄された後は自分が責任取りますから」
「だから、リリアは誰にもやらん!!」
ユーグ様がまた冗談を言い出したので、私は苦笑いをする。
「ユーグ様にだって婚約者がいるんじゃないですか?侯爵家のご嫡男なんですから」
「自分は三男なので、いないですよ。気楽なもんです。でも騎士は続けるので、リリア様に不自由はさせませんよ」
軽口を叩くユーグ様に私は適当に笑顔で返した。この人懐っこい笑顔で冗談を言うユーグ様に本気で返すと、疲れると悟ったのだ。
「それと、リリア様、敬語は無しでって言いましたよね? あと、様もいらないです。ユーグで!」
「わかった、ユーグ……」
すっかり抵抗することを諦めた私は、彼の言う通りにすると、ユーグは満足そうに太陽のような笑顔をわたしに向けた。
人当たり良くて、本当に変な人。
でもアレクのお墨付きだし、これから護衛に付いてくれるので、仲良くするに越したことはない。
良い人でむしろ良かったのかも!イスランみたいな人だとやりづらいもの。
そうして秘密を共有する面々と挨拶を済ませた私は、明日からの本格的な聖女業をアレクとユーグと打合わせをしてから帰路についた。