生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
25.結界修復
翌日、早速結界修復の仕事に取り掛かることになった。
「リリア〜、一緒に行けなくてごめんよ〜」
アレクはルーカス様の視察に同行するため、今日は別行動。朝からこんな調子で泣いている。
「隊長、自分が何があってもリリア様をお守りしますのでご安心ください!」
家まで迎えに来てくれたユーグがアレクに笑顔で言う。
「何かあったら、ユーグを盾にしてでも逃げるんだよ」
泣きながら、冗談なのか本気なのかわからない台詞を言うアレクに、私はジト目で答えた。
「もう、お父様! 私だって聖女なんですから、しっかりやってみせます。それに、トロワもいるし」
「おう! 俺がいるから安心だぞ!」
ニャーンとドヤ顔でアレクにトロワが言うも、父の心配そうな顔は固定されたまま。
「そこは、ユーグがいるから大丈夫、って言って欲しいですね〜」
「ユーグも頼りにしてるわよ」
にぱー、っと笑って割り込むユーグに、私は取って付けたかのように答える。
この二人が絡むと、いまいち緊張感が薄まるわね。
「じゃあ、行ってきますね! 必ずお父様の元に帰って来ますから!」
心配そうなアレクはやっと笑顔になり、私を抱き上げると、馬車に乗せてくれた。
「リリア、気を付けて」
「はい」
そうして、朝から賑やかな送迎の元、私は目的の地へ向かった。
◇◇◇
「今日行くマーグリット領にはすでに隊員も向かっています」
馬車の中でユーグが今日の説明をしてくれていた。
マーグリット領はマーグリット伯爵家が治める領で、王都からも日帰りで行ける近さ。
結界修復のため、足を踏み入れることはルーカス様の手回しにより許可されていた。
「フォークス領にいた面々が主なので、みんなリリア様にお会い出来るの楽しみにしていましたよ」
「そうなんだ」
ユーグが嬉しそうに話してくれるので、私も嬉しくなった。知った顔が多くいるのは安心出来る。
「じゃあ、またマフィンを作って行こうかな」
「え? 本当ですか? 自分、リリア様のマフィン好きです」
目を輝かせてこちらを見るユーグに、思わず餌付けしてしまった気分になり、笑ってしまう。
明るいユーグのおかげで、和やかな空気の中、ふとした疑問を彼に聞いた。
「そういえば、ソフィー様には専属護衛はいるの?」
もう一人の聖女様。ルーカス様によると、遊んでばかりみたいだけど、表向きは王都の結界を作り上げている。
「ジェイル様の婚約者ですからね。そりゃいますよー」
「近衛隊の誰かが務めているの?」
「近衛隊は第一王子派ですからねえ。騎士団の第二王子派の奴らが務めてますよ」
近衛隊全体が第一王子派なのか。なら、私の聖女業も安心かな。
そう思って考え込んでいると、ユーグが私の顔を覗き込んだ。
「リリア様、また難しいこと考えてるでしょ」
あまりの顔の近さに、思わずドキリとしてしまう。
「リリア様は自分が命に変えても守りますから大丈夫ですよ」
彼の、いつもの明るい笑顔とは違った真剣な表情に、思わずドキドキしてしまう。
「簡単に命に変えてもとか言わないで」
私の返事に、ユーグはブハッと笑いだした。
今の笑う要素あった?
ちょっとムッとした私に、ユーグは笑いながらこちらを見て。
「やっぱり、リリア様、好きだなあ」
そんなことを言ってきた。
「ありがとう。私もユーグのこと好きだよ」
「……そういう意味じゃないんですけど」
「どういう意味?」
聖女として認められているなら嬉しい。それに専属護衛のユーグとは関係が良好でありたい。
でも、意味が違うってどういうこと?
私が疑問に思っていると、ユーグはニコリと笑って言った。
「まあ、これからってことですね」
「????」
増々意味がわからない。
そんな私に、ユーグは「今はそれで良いです」と言って、笑った。
そうこうするうちに、馬車はマーグリット領に着いた。
馬車を降りると、見知った近衛隊の面々が嬉しそうに迎えてくれた。
フォークス領で仲良くなった人たちばかりで、仕事もやりやすかった。
マーグリット領の結界は一つだけ。私たちは結界に向かって、何事もなく修復を完了した。
「王都に近いほど結界の強度が強いのかな」
私はマーグリット領の結界を見てトロワに聞いた。
ここの結界は揺らぎがあるものの、欠損は無かった。フォークス領では穴が空いていたほどなのに。
「リヴィアは最後に王都で強力な結界を張ったからな。その影響は強いかもしれない」
「じゃあ、王都から離れた場所から回った方が良いよね」
トロワと、王都から遠い結界を回った方が良いと話し合った私は、ユーグに相談に行った。
「それでしたら、一度、殿下にご相談いただいた方が良いですね。隊長には…リリア様からが早いですよね」
ユーグと話して、まずはアレクに話して、ルーカス様にも判断を仰ぐことになった。
もしかしたら久しぶりにルーカス様に会えるかもしれない。そんな期待を胸に、私はその日の仕事を終えた。
「リリア〜、一緒に行けなくてごめんよ〜」
アレクはルーカス様の視察に同行するため、今日は別行動。朝からこんな調子で泣いている。
「隊長、自分が何があってもリリア様をお守りしますのでご安心ください!」
家まで迎えに来てくれたユーグがアレクに笑顔で言う。
「何かあったら、ユーグを盾にしてでも逃げるんだよ」
泣きながら、冗談なのか本気なのかわからない台詞を言うアレクに、私はジト目で答えた。
「もう、お父様! 私だって聖女なんですから、しっかりやってみせます。それに、トロワもいるし」
「おう! 俺がいるから安心だぞ!」
ニャーンとドヤ顔でアレクにトロワが言うも、父の心配そうな顔は固定されたまま。
「そこは、ユーグがいるから大丈夫、って言って欲しいですね〜」
「ユーグも頼りにしてるわよ」
にぱー、っと笑って割り込むユーグに、私は取って付けたかのように答える。
この二人が絡むと、いまいち緊張感が薄まるわね。
「じゃあ、行ってきますね! 必ずお父様の元に帰って来ますから!」
心配そうなアレクはやっと笑顔になり、私を抱き上げると、馬車に乗せてくれた。
「リリア、気を付けて」
「はい」
そうして、朝から賑やかな送迎の元、私は目的の地へ向かった。
◇◇◇
「今日行くマーグリット領にはすでに隊員も向かっています」
馬車の中でユーグが今日の説明をしてくれていた。
マーグリット領はマーグリット伯爵家が治める領で、王都からも日帰りで行ける近さ。
結界修復のため、足を踏み入れることはルーカス様の手回しにより許可されていた。
「フォークス領にいた面々が主なので、みんなリリア様にお会い出来るの楽しみにしていましたよ」
「そうなんだ」
ユーグが嬉しそうに話してくれるので、私も嬉しくなった。知った顔が多くいるのは安心出来る。
「じゃあ、またマフィンを作って行こうかな」
「え? 本当ですか? 自分、リリア様のマフィン好きです」
目を輝かせてこちらを見るユーグに、思わず餌付けしてしまった気分になり、笑ってしまう。
明るいユーグのおかげで、和やかな空気の中、ふとした疑問を彼に聞いた。
「そういえば、ソフィー様には専属護衛はいるの?」
もう一人の聖女様。ルーカス様によると、遊んでばかりみたいだけど、表向きは王都の結界を作り上げている。
「ジェイル様の婚約者ですからね。そりゃいますよー」
「近衛隊の誰かが務めているの?」
「近衛隊は第一王子派ですからねえ。騎士団の第二王子派の奴らが務めてますよ」
近衛隊全体が第一王子派なのか。なら、私の聖女業も安心かな。
そう思って考え込んでいると、ユーグが私の顔を覗き込んだ。
「リリア様、また難しいこと考えてるでしょ」
あまりの顔の近さに、思わずドキリとしてしまう。
「リリア様は自分が命に変えても守りますから大丈夫ですよ」
彼の、いつもの明るい笑顔とは違った真剣な表情に、思わずドキドキしてしまう。
「簡単に命に変えてもとか言わないで」
私の返事に、ユーグはブハッと笑いだした。
今の笑う要素あった?
ちょっとムッとした私に、ユーグは笑いながらこちらを見て。
「やっぱり、リリア様、好きだなあ」
そんなことを言ってきた。
「ありがとう。私もユーグのこと好きだよ」
「……そういう意味じゃないんですけど」
「どういう意味?」
聖女として認められているなら嬉しい。それに専属護衛のユーグとは関係が良好でありたい。
でも、意味が違うってどういうこと?
私が疑問に思っていると、ユーグはニコリと笑って言った。
「まあ、これからってことですね」
「????」
増々意味がわからない。
そんな私に、ユーグは「今はそれで良いです」と言って、笑った。
そうこうするうちに、馬車はマーグリット領に着いた。
馬車を降りると、見知った近衛隊の面々が嬉しそうに迎えてくれた。
フォークス領で仲良くなった人たちばかりで、仕事もやりやすかった。
マーグリット領の結界は一つだけ。私たちは結界に向かって、何事もなく修復を完了した。
「王都に近いほど結界の強度が強いのかな」
私はマーグリット領の結界を見てトロワに聞いた。
ここの結界は揺らぎがあるものの、欠損は無かった。フォークス領では穴が空いていたほどなのに。
「リヴィアは最後に王都で強力な結界を張ったからな。その影響は強いかもしれない」
「じゃあ、王都から離れた場所から回った方が良いよね」
トロワと、王都から遠い結界を回った方が良いと話し合った私は、ユーグに相談に行った。
「それでしたら、一度、殿下にご相談いただいた方が良いですね。隊長には…リリア様からが早いですよね」
ユーグと話して、まずはアレクに話して、ルーカス様にも判断を仰ぐことになった。
もしかしたら久しぶりにルーカス様に会えるかもしれない。そんな期待を胸に、私はその日の仕事を終えた。