生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
30.ルッシャー領
ルッシャー領へは予定通り、その日の夜に到着した。
あの後、馬車の中ではユーグはずっと黙ったままで。いつも楽しく話しかけてくれていたので、少し寂しかった。
……仕方ないか。
ユーグの気持ちを知ってしまった以上、これまでの関係ではいられない。ユーグもそのつもりだった。
アレクに言って護衛を変えてもらった方が良いのかもしれない。
馬車を降りると、今回参加の騎士たちも馬を繋いで、宿の前にガヤガヤと集っていた。
「まあ、ルーカスを好きになるのは時間の問題だったよな。魂はリヴィアなんだから」
ふと、私の肩から声がした。
わっ、すれて、た……!!!!
「ト、トトトト、トロワ……」
すっかり存在を忘れていたトロワに、私は慌てふためく。
馬車の中の一部始終をトロワに聞かれていたのだ。
「リリアもユーグもひでえよ。俺がいるのに甘い雰囲気作りやがって」
トロワは、ユーグが私に迫り出した時に、反対側の席の端っこに移動したらしい。
「おちおち寝てもいられねえ」
「あの、トロワ……」
アワアワする私に、トロワは優しくモフモフの手で頭を撫でてくれた。
「落ち着け。俺はいつだってリリアの味方だ」
その優しい手に何とか落ち着きを取り戻す。
「やっぱり、リヴィアだからルーカス様に惹かれたのかな?」
しょんぼりする私に、トロワはモフッと頬を叩いた。
「それは完全に否定出来ないけど、リリアの心はリリアの物だろ? リリア自身があいつに惹かれただけの話だ」
「うん……!」
私はトロワにおでこを付けて、スリスリとした。
そうだよね。リリアとして出会っても、私はルーカス様に惹かれた。あの笑顔をいつまでも見ていたいと思ってしまったんだ。
「それに、二人が……」
トロワはそこまで言うと、黙ってしまった。
「トロワ?」
「いや、何でもない」
それ以上トロワは何も言わなかった。
何だろう?まだ言えないことがトロワにはあるのかな?
少し心配に思いながらも、私の味方でいてくれるこの可愛い猫の姿の精霊は全面的に信頼しているので、私もそれ以上は聞かなかった。
「リリア様、お部屋の準備が出来ましたよ〜」
トロワと話してしばらく、ユーグがいつもの調子で呼びに来た。
「う、うん」
いつもと変わらない態度。
さっきまでは黙って何も言わず、気まずかったから、何だかホッとした。
ユーグに連れられて、宿の二階まで上がると、私に用意された部屋は簡素ながらも、二つのベッドが配置されていた。
「今日は、何もしませんから安心してください」
いつもの調子で話すユーグを見れば、彼はニカッと笑っていた。
「今日はって、何!」
そんな彼の態度が嬉しくて、いつもはスルーするのに、ツッコミを入れる。
すると、彼の表情は真面目なものになり、瞳には熱を帯びさせていた。
「リリア様、先程は焦って先走ってしまい、申し訳ございませんでした」
先程のような空気に、私も身構えてしまう。
「リリア様を想うことだけはどうか許してください。そして、どうか嫌いにならないでください」
「嫌いになんてならないよ!」
ユーグの悲しそうな顔に、身構えていた私は、思わず力いっぱい答えた。
「じゃあ、護衛の任も解かないでくれますか?」
子犬のような瞳で私を見つめるユーグ。
うう、そんなこと言われたら。
「ユーグはそれで良いの?」
「リリア様の側にいたいんです」
「わかった……」
ユーグの勢いに、つい返事をしてしまう。
「ありがとうございます!!」
私の返事を聞いたユーグは嬉しそうに笑った。
ユーグの気持ちには応えられないけど、信頼はしてるし、今まで通りに接してくれるならいっか。
嬉しそうな彼の顔を見ながらそう思っていると、ユーグはこちらにウインクをして言った。
「僕は、ルーカス様とリリア様が上手くいくとは思いませんから、その時は隙をつかせてもらいますからね?」
ユーグは私をまだ諦めてないらしい。
口をパクパクさせて顔を真っ赤にしていると、ユーグはいつものニカッとした笑顔に戻った。
「リリア様、お風呂どうぞ。 自分、部屋の外で警護しますので」
そう言って、部屋の外に出てしまった。
「あいつ、策士だな」
ボソッとトロワが呟いた。
確かに、ルーカス様にその気はない。
『上手くいくわけない』、わかってる。
でも、ユーグのそんな些細な言葉に、傷付いている自分がいることに私は気付いた。
「私もルーカス様を想っているだけなら良いのかな」
「だから、リヴィアだって教えてやれば…」
「それは、嫌!!」
ポツリとこぼした言葉に、トロワはもっともなことを言ったんだと思う。でも。
それだけは嫌だった。
「リリアを好きになることは無いってことだよね」
言葉にすると、何だか悲しくなってきた。
「リリア、ごめん。」
トロワは慌てて私の頬を撫でてくれた。
「ううん、私こそ大きな声出してごめん」
トロワのモフモフの手に癒やされながら、私は泣きそうな自分を我慢した。
「ルーカスも時間の問題だと思うけど…」
トロワがそんなことを呟いていることには気付かず、私は彼を抱きしめた。
あの後、馬車の中ではユーグはずっと黙ったままで。いつも楽しく話しかけてくれていたので、少し寂しかった。
……仕方ないか。
ユーグの気持ちを知ってしまった以上、これまでの関係ではいられない。ユーグもそのつもりだった。
アレクに言って護衛を変えてもらった方が良いのかもしれない。
馬車を降りると、今回参加の騎士たちも馬を繋いで、宿の前にガヤガヤと集っていた。
「まあ、ルーカスを好きになるのは時間の問題だったよな。魂はリヴィアなんだから」
ふと、私の肩から声がした。
わっ、すれて、た……!!!!
「ト、トトトト、トロワ……」
すっかり存在を忘れていたトロワに、私は慌てふためく。
馬車の中の一部始終をトロワに聞かれていたのだ。
「リリアもユーグもひでえよ。俺がいるのに甘い雰囲気作りやがって」
トロワは、ユーグが私に迫り出した時に、反対側の席の端っこに移動したらしい。
「おちおち寝てもいられねえ」
「あの、トロワ……」
アワアワする私に、トロワは優しくモフモフの手で頭を撫でてくれた。
「落ち着け。俺はいつだってリリアの味方だ」
その優しい手に何とか落ち着きを取り戻す。
「やっぱり、リヴィアだからルーカス様に惹かれたのかな?」
しょんぼりする私に、トロワはモフッと頬を叩いた。
「それは完全に否定出来ないけど、リリアの心はリリアの物だろ? リリア自身があいつに惹かれただけの話だ」
「うん……!」
私はトロワにおでこを付けて、スリスリとした。
そうだよね。リリアとして出会っても、私はルーカス様に惹かれた。あの笑顔をいつまでも見ていたいと思ってしまったんだ。
「それに、二人が……」
トロワはそこまで言うと、黙ってしまった。
「トロワ?」
「いや、何でもない」
それ以上トロワは何も言わなかった。
何だろう?まだ言えないことがトロワにはあるのかな?
少し心配に思いながらも、私の味方でいてくれるこの可愛い猫の姿の精霊は全面的に信頼しているので、私もそれ以上は聞かなかった。
「リリア様、お部屋の準備が出来ましたよ〜」
トロワと話してしばらく、ユーグがいつもの調子で呼びに来た。
「う、うん」
いつもと変わらない態度。
さっきまでは黙って何も言わず、気まずかったから、何だかホッとした。
ユーグに連れられて、宿の二階まで上がると、私に用意された部屋は簡素ながらも、二つのベッドが配置されていた。
「今日は、何もしませんから安心してください」
いつもの調子で話すユーグを見れば、彼はニカッと笑っていた。
「今日はって、何!」
そんな彼の態度が嬉しくて、いつもはスルーするのに、ツッコミを入れる。
すると、彼の表情は真面目なものになり、瞳には熱を帯びさせていた。
「リリア様、先程は焦って先走ってしまい、申し訳ございませんでした」
先程のような空気に、私も身構えてしまう。
「リリア様を想うことだけはどうか許してください。そして、どうか嫌いにならないでください」
「嫌いになんてならないよ!」
ユーグの悲しそうな顔に、身構えていた私は、思わず力いっぱい答えた。
「じゃあ、護衛の任も解かないでくれますか?」
子犬のような瞳で私を見つめるユーグ。
うう、そんなこと言われたら。
「ユーグはそれで良いの?」
「リリア様の側にいたいんです」
「わかった……」
ユーグの勢いに、つい返事をしてしまう。
「ありがとうございます!!」
私の返事を聞いたユーグは嬉しそうに笑った。
ユーグの気持ちには応えられないけど、信頼はしてるし、今まで通りに接してくれるならいっか。
嬉しそうな彼の顔を見ながらそう思っていると、ユーグはこちらにウインクをして言った。
「僕は、ルーカス様とリリア様が上手くいくとは思いませんから、その時は隙をつかせてもらいますからね?」
ユーグは私をまだ諦めてないらしい。
口をパクパクさせて顔を真っ赤にしていると、ユーグはいつものニカッとした笑顔に戻った。
「リリア様、お風呂どうぞ。 自分、部屋の外で警護しますので」
そう言って、部屋の外に出てしまった。
「あいつ、策士だな」
ボソッとトロワが呟いた。
確かに、ルーカス様にその気はない。
『上手くいくわけない』、わかってる。
でも、ユーグのそんな些細な言葉に、傷付いている自分がいることに私は気付いた。
「私もルーカス様を想っているだけなら良いのかな」
「だから、リヴィアだって教えてやれば…」
「それは、嫌!!」
ポツリとこぼした言葉に、トロワはもっともなことを言ったんだと思う。でも。
それだけは嫌だった。
「リリアを好きになることは無いってことだよね」
言葉にすると、何だか悲しくなってきた。
「リリア、ごめん。」
トロワは慌てて私の頬を撫でてくれた。
「ううん、私こそ大きな声出してごめん」
トロワのモフモフの手に癒やされながら、私は泣きそうな自分を我慢した。
「ルーカスも時間の問題だと思うけど…」
トロワがそんなことを呟いていることには気付かず、私は彼を抱きしめた。