生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
第三章 二人の恋と救国編
37.逢瀬
「リリア様、ポーションを受け取りに来ました!」
「ありがとう。そちらの区画の物が陛下専用よ」
私が王都に来てから、半年が経った。
まだ暑さが少し残る外の日差しが、窓からこぼれ落ちる。私は専用の研究室で、ふう、と一息をついた。
治療院に卸していたポーションは好評で、その噂は、病気がちな国王陛下への耳にも届き、ルーカスの婚約者で聖女でもある私は、陛下へのポーション作りもするようになった。
陛下はみるみる回復され、公の場に出られることも多くなった。それでも体調を崩したり回復したりの繰り返し。
ルーカスは、そのタイミングがおかしいと、内々にアレクに調べさせているらしいけど。
まさか、第二王子派の人たちが……?いや、まさかね。そんな恐ろしいことをするなんてさすがに。
「リリア様?」
難しい顔をして悩んでいると、ポーションを受け取りに来た近衛隊員が、心配そうな顔をして立っていた。
「あ、ごめんなさい! 良かったら、マフィン食べていく?」
「良いんですか?」
いけない、いけない!考えていても仕方ないわね。
私は慌てて、近くにあったバスケットを開いて、隊員に差し出した。
「実は、皆リリア様のマフィン狙いで、このポーションを受け取る役目は奪い合いなんです」
「ええ?」
マフィンを頬張りながら、嬉しそうに教えてくれた隊員に思わず苦笑してしまう。
「王都以外の結界修復は済んで、中々リリア様とご一緒する機会が減ってしまいましたからね」
もぐもぐと噛み締めながら話す隊員に、確かにそうね、とうなずく。
この半年で、王都以外の結界は修復が済んだ。まだ手出し出来ていない王都の結界は、『リヴィア』の力がまだ継続しているので大丈夫そうだけど……。
「リリア様が結界を修復されてから、各地の領からは魔物が出なくなったと報告がありますし、ルーカス様を王に! って声は高まっていますよ」
もぐもぐとマフィンを食べながら話してくれる隊員に頷きなから聞き入る。
そうなのよね。「あんな子供が婚約者?」と言われていたのが、最近では王宮や、結界を修復した領の貴族の態度が違う。
皆私を皇太子妃殿下として扱う。何だかくすぐったいような、変な気分だ。
「だから、手の平を返すと言っただろう?」
「ルーカス様!」
いつの間にか研究室の入口に立っていたルーカスの声に驚いて、私は立ち上がる。
それはマフィンをもぐもぐしていた隊員も一緒で。慌ててマフィンを飲み込みながらも、ルーカスに深く頭を下げた。
「婚約者と二人きりの時間を邪魔しないでくれるか?」
口の端を上げて笑うルーカスが隊員にそう声をかけると、彼は慌てて「し、失礼しましたっっ!」と言って、ポーションを抱えて部屋を出ていってしまった。
「また餌付けしていたのか?」
そんな彼に申し訳なく思いながら見送っていると、ルーカスが近付いて来た。
「餌付けって……」
前もそんなこと言われたなあ。
苦笑しながらルーカスを見上げると、彼は少しムスッとしていた。
「ルーカス様?」
「今は二人きりだ」
「……ルーカス」
この何度したかわからないやり取りに、ルーカスは満足そうに微笑んだ。
「私以外の男をその瞳に映さないで欲しい」
「ル、ル、ルーカス?!」
いつの間にか私との距離を詰めて、至近距離で話すルーカスに思わず動揺してしまう。
「冗談だ」
「もう!」
慌てる私の顔を見て、ルーカスはフッと笑った。
想いが通じ合ってからというものの、ルーカスが甘くて困る。
「でも…」
「?」
赤い顔をパタパタとしていると、ルーカスが再び近付いて来た。
「私以外の男と二人きりになるのはいただけないな?」
「! お、お仕事ですよ?! それに、トロワだっているし……!」
顔をずいっと近づけられ、せっかく冷ました顔が再び赤くなる。
「おー、まったく空気化してるが、俺もいるぞー」
ニャーン、と猫の姿をしたトロワが話すも、ルーカスには届かない。
トロワは元の姿を取り戻したものの、騒ぎにならないよう、猫の姿に戻っている。いざというときは、ライオンの姿に戻って私を守ると言ってくれていた。
今はそんなことより、ルーカス!
「ルーカス、そんな感じだったっけ?」
私は、近づくルーカスから逃れようとするも、彼の腕にすっぽりと捕らえられてしまった。
「あの頃は私も子供だった。リヴィアを失って、ちゃんと愛を伝える大切さを知っただけだ」
またしれっとそんな甘い言葉を吐く。
確かに、私は中身十六歳だけど、ルーカスはもう二十六歳だ。すっかり男の人な訳で……。
「何か余裕で悔しい」
私は顔を赤くしながらも、彼の腕の中でポツリと呟けば、ルーカスはクスッと笑い、私の頬に唇を落とした。
「ルーカス?!」
思わず驚いてルーカスを見れば、彼はとびきり甘い顔で私を見つめていた。
「可愛い」
そうして私は彼の腕に抱きしめられた。
本当に困る。
私はルーカスにドキドキさせられっぱなしだ。
でも、こんなふうに大切に想ってくれて、ちゃんと言葉にしてくれて、私は幸せだ。
この研究室は二人きりになれる数少ない場所。
二人の本当の関係がまだ周りには秘密な私たちは、ここで逢瀬を重ねていた。
「ありがとう。そちらの区画の物が陛下専用よ」
私が王都に来てから、半年が経った。
まだ暑さが少し残る外の日差しが、窓からこぼれ落ちる。私は専用の研究室で、ふう、と一息をついた。
治療院に卸していたポーションは好評で、その噂は、病気がちな国王陛下への耳にも届き、ルーカスの婚約者で聖女でもある私は、陛下へのポーション作りもするようになった。
陛下はみるみる回復され、公の場に出られることも多くなった。それでも体調を崩したり回復したりの繰り返し。
ルーカスは、そのタイミングがおかしいと、内々にアレクに調べさせているらしいけど。
まさか、第二王子派の人たちが……?いや、まさかね。そんな恐ろしいことをするなんてさすがに。
「リリア様?」
難しい顔をして悩んでいると、ポーションを受け取りに来た近衛隊員が、心配そうな顔をして立っていた。
「あ、ごめんなさい! 良かったら、マフィン食べていく?」
「良いんですか?」
いけない、いけない!考えていても仕方ないわね。
私は慌てて、近くにあったバスケットを開いて、隊員に差し出した。
「実は、皆リリア様のマフィン狙いで、このポーションを受け取る役目は奪い合いなんです」
「ええ?」
マフィンを頬張りながら、嬉しそうに教えてくれた隊員に思わず苦笑してしまう。
「王都以外の結界修復は済んで、中々リリア様とご一緒する機会が減ってしまいましたからね」
もぐもぐと噛み締めながら話す隊員に、確かにそうね、とうなずく。
この半年で、王都以外の結界は修復が済んだ。まだ手出し出来ていない王都の結界は、『リヴィア』の力がまだ継続しているので大丈夫そうだけど……。
「リリア様が結界を修復されてから、各地の領からは魔物が出なくなったと報告がありますし、ルーカス様を王に! って声は高まっていますよ」
もぐもぐとマフィンを食べながら話してくれる隊員に頷きなから聞き入る。
そうなのよね。「あんな子供が婚約者?」と言われていたのが、最近では王宮や、結界を修復した領の貴族の態度が違う。
皆私を皇太子妃殿下として扱う。何だかくすぐったいような、変な気分だ。
「だから、手の平を返すと言っただろう?」
「ルーカス様!」
いつの間にか研究室の入口に立っていたルーカスの声に驚いて、私は立ち上がる。
それはマフィンをもぐもぐしていた隊員も一緒で。慌ててマフィンを飲み込みながらも、ルーカスに深く頭を下げた。
「婚約者と二人きりの時間を邪魔しないでくれるか?」
口の端を上げて笑うルーカスが隊員にそう声をかけると、彼は慌てて「し、失礼しましたっっ!」と言って、ポーションを抱えて部屋を出ていってしまった。
「また餌付けしていたのか?」
そんな彼に申し訳なく思いながら見送っていると、ルーカスが近付いて来た。
「餌付けって……」
前もそんなこと言われたなあ。
苦笑しながらルーカスを見上げると、彼は少しムスッとしていた。
「ルーカス様?」
「今は二人きりだ」
「……ルーカス」
この何度したかわからないやり取りに、ルーカスは満足そうに微笑んだ。
「私以外の男をその瞳に映さないで欲しい」
「ル、ル、ルーカス?!」
いつの間にか私との距離を詰めて、至近距離で話すルーカスに思わず動揺してしまう。
「冗談だ」
「もう!」
慌てる私の顔を見て、ルーカスはフッと笑った。
想いが通じ合ってからというものの、ルーカスが甘くて困る。
「でも…」
「?」
赤い顔をパタパタとしていると、ルーカスが再び近付いて来た。
「私以外の男と二人きりになるのはいただけないな?」
「! お、お仕事ですよ?! それに、トロワだっているし……!」
顔をずいっと近づけられ、せっかく冷ました顔が再び赤くなる。
「おー、まったく空気化してるが、俺もいるぞー」
ニャーン、と猫の姿をしたトロワが話すも、ルーカスには届かない。
トロワは元の姿を取り戻したものの、騒ぎにならないよう、猫の姿に戻っている。いざというときは、ライオンの姿に戻って私を守ると言ってくれていた。
今はそんなことより、ルーカス!
「ルーカス、そんな感じだったっけ?」
私は、近づくルーカスから逃れようとするも、彼の腕にすっぽりと捕らえられてしまった。
「あの頃は私も子供だった。リヴィアを失って、ちゃんと愛を伝える大切さを知っただけだ」
またしれっとそんな甘い言葉を吐く。
確かに、私は中身十六歳だけど、ルーカスはもう二十六歳だ。すっかり男の人な訳で……。
「何か余裕で悔しい」
私は顔を赤くしながらも、彼の腕の中でポツリと呟けば、ルーカスはクスッと笑い、私の頬に唇を落とした。
「ルーカス?!」
思わず驚いてルーカスを見れば、彼はとびきり甘い顔で私を見つめていた。
「可愛い」
そうして私は彼の腕に抱きしめられた。
本当に困る。
私はルーカスにドキドキさせられっぱなしだ。
でも、こんなふうに大切に想ってくれて、ちゃんと言葉にしてくれて、私は幸せだ。
この研究室は二人きりになれる数少ない場所。
二人の本当の関係がまだ周りには秘密な私たちは、ここで逢瀬を重ねていた。