生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
4.リヴィアの気持ち
「ねえ、ルーカスは王子じゃなかったら何をしたかった?」
「ええ? そんなもしも話なんて考えられないよ」
ルーカス様に、「二人の時はルーカスと呼んで」と言われる程親しくなった頃。私はルーカス様にそんな質問をした。
「ルーカスの答えはつまんないなー」
「じゃあリヴィアは何なのさ?」
ブーと口を尖らせる私に、ルーカス様は笑いながら聞いてくれたので、待ってましたとばかりに私は答えた。
「それは、マフィン屋さんです!」
「ええ……マフィンって、甘いやつだろ?」
甘い物が苦手なルーカス様は苦い顔をして私を見た。
「いーえ、お食事マフィンと言って、しょっぱいのもあるんですよ!」
「マフィンなのに?」
ドヤ顔で答える私に疑いの眼差しで見るルーカス様。
「そう言うと思って、作って来ました!」
私はその日手作りしたマフィンを差し出した。甘い物が苦手なルーカス様に喜んでもらいたくて、レシピから考えたのだ。
鴨のローストとオレンジソース、生地にはマッシュポテトを混ぜた、お食事マフィン。自信作だ。
えっ……、という顔をするルーカス様を他所に、私は側に控えていたアレクに毒味をしてもらう。
「…! 美味しいです!」
「お前が感想言うなよ……」
私のマフィンの味に満足したアレクが満面の笑みでルーカス様に言うと、彼はブスッとした顔で言った。
「婚約者の手作りを先に食われるなんて……」
ブツブツ言いながらも、ルーカス様がマフィンに口を運ぶ。
「……!美味しい!」
「感想がアレクと一緒!!」
パアッと顔を明るくしたルーカス様に私は吹き出してしまった。
「う、うるさいな。」
耳を赤くしたルーカス様はそっぽを向いてしまった。でも、私のマフィンを完食すると。
「これなら食べられる」
とそっぽを向いたまま言った。
「良かった! ルーカスに美味しく食べて欲しくて、一生懸命考えて作ったから!」
私はその言葉が嬉しくて、ルーカス様にそう言えば、ルーカス様の耳は増々赤くなっていった。
「しかし、よくこんな発想思いつきますね」
「何事もやってみないとわからないからね!」
アレクの言葉に私が答えれば、ルーカス様もこちらを振り返って笑った。
「リヴィアらしいな」
ルーカス様は綺麗な金色の髪を揺らし、透き通る青い瞳を細めて、穏やかに笑った。私はこの優しい笑顔が大好きだった。
明るくて優しくて、皆に好かれていたルーカス様。彼の治める国はきっと皆が幸せだろう、そう思っていた。
だから、あの時、国を守るために命をかけたことは後悔していない。だけど、ルーカス様の隣で見届けられないことが心残りで悲しかった。
リヴィアの記憶を思い出した今、国の平和を見届けられても、ルーカス様の隣にいられないのは変わらない。
そんな現実を急に突きつけられて、ふいに悲しくなった。でも。
「ルーカスが幸せならいっかー」
部屋に戻り、自分のベッドの上でしばらく昔を思い出していた私は、天井を見上げる。
リリアとして今度は穏やかに人生過ごせるなんて幸せだよね! しかもルーカスの国で!
『リヴィア』の気持ちを抱えながらも、持ち前の何とかなる精神で、私は気持ちを切り替えたのだった。
「リリア」
ベッドの上でゴロゴロしていると、トロワが光に包まれて、空中に現れた。
「トロワ、お帰り! どうだった?」
私が記憶を取り戻したことに理由があるのか気になって、私は帰って来たばかりのトロワを受け止めて顔を覗き込んだ。
「最近、魔物が活発になっているんだ。もしかしたらリディアの張った結界に亀裂が生じているかもしれねーって。それに魂が反応したのかもって」
「何ですって?!」
トロワの言葉に思わずギョッとする。
私が命をかけて張った結界が……
「あれから10年だからなー。でもリヴィアの力だからこそ、10年も保っていたんだ。すげーことだよ?」
暗い表情をした私を元気づけるようにトロワがモフモフの手で私の頬に触れる。
「でも……」
「それに、まだ壊れては無い。それに、新しい聖女もいるしな? リリアは安心して暮らしな!」
ニカッと笑うトロワの手が温かくて、私は安心する。自分の手を添えて、トロワに笑顔を向けた。
「ありがとう」
私がそう言うと、トロワは私の手から離れ、ベッドの上にスタッと降り立った。
「で、だ。 リリア、また俺と契約して?」
「へっ?」
契約とは従属のことだろうか。でも私は今世は聖女ではない。
「私、トロワとは友達だと思ってるよ? 側にいてくれたら嬉しいけど、トロワも自由にして良いんだよ?」
おずおずと私が言えば、トロワはしっぽでペシッと私の身体を叩いた。……痛くは無い。可愛いだけなのだけど。
「バカ! リリア! 俺は、またお前の側にいたいんだよ。まさかまたこうやって話せるなんて、夢にも思わなかった。だから……」
「でも私、聖女でも無いのに……」
「女神様から許可は取った」
「ええ……」
トロワの行動力に思わず驚いてしまう。
でも、ここまで言ってくれているトロワに甘えても良いのかな……?
トロワの気持ちが嬉しくて。つい涙ぐんでしまう。
「じゃあ、トロワ、お願い?」
「任せとけ!」
トロワはウインクをすると、契約の光を発動させた。
「俺、光の精霊トロワはリリア・フォークスを主と認める」
「リリア・フォークスの名において、トロワを我の従属とする」
眩しい光に包まれ、私の両手とトロワの両手が重なり合うと、その光は吸収するように手の中に収まっていった。
そっと目を開けると、満面の笑みのトロワがいた。
「またずっと一緒だ!」
「うん!」
私は再び側にいてくれる大好きな友達を抱きしめた。
「ええ? そんなもしも話なんて考えられないよ」
ルーカス様に、「二人の時はルーカスと呼んで」と言われる程親しくなった頃。私はルーカス様にそんな質問をした。
「ルーカスの答えはつまんないなー」
「じゃあリヴィアは何なのさ?」
ブーと口を尖らせる私に、ルーカス様は笑いながら聞いてくれたので、待ってましたとばかりに私は答えた。
「それは、マフィン屋さんです!」
「ええ……マフィンって、甘いやつだろ?」
甘い物が苦手なルーカス様は苦い顔をして私を見た。
「いーえ、お食事マフィンと言って、しょっぱいのもあるんですよ!」
「マフィンなのに?」
ドヤ顔で答える私に疑いの眼差しで見るルーカス様。
「そう言うと思って、作って来ました!」
私はその日手作りしたマフィンを差し出した。甘い物が苦手なルーカス様に喜んでもらいたくて、レシピから考えたのだ。
鴨のローストとオレンジソース、生地にはマッシュポテトを混ぜた、お食事マフィン。自信作だ。
えっ……、という顔をするルーカス様を他所に、私は側に控えていたアレクに毒味をしてもらう。
「…! 美味しいです!」
「お前が感想言うなよ……」
私のマフィンの味に満足したアレクが満面の笑みでルーカス様に言うと、彼はブスッとした顔で言った。
「婚約者の手作りを先に食われるなんて……」
ブツブツ言いながらも、ルーカス様がマフィンに口を運ぶ。
「……!美味しい!」
「感想がアレクと一緒!!」
パアッと顔を明るくしたルーカス様に私は吹き出してしまった。
「う、うるさいな。」
耳を赤くしたルーカス様はそっぽを向いてしまった。でも、私のマフィンを完食すると。
「これなら食べられる」
とそっぽを向いたまま言った。
「良かった! ルーカスに美味しく食べて欲しくて、一生懸命考えて作ったから!」
私はその言葉が嬉しくて、ルーカス様にそう言えば、ルーカス様の耳は増々赤くなっていった。
「しかし、よくこんな発想思いつきますね」
「何事もやってみないとわからないからね!」
アレクの言葉に私が答えれば、ルーカス様もこちらを振り返って笑った。
「リヴィアらしいな」
ルーカス様は綺麗な金色の髪を揺らし、透き通る青い瞳を細めて、穏やかに笑った。私はこの優しい笑顔が大好きだった。
明るくて優しくて、皆に好かれていたルーカス様。彼の治める国はきっと皆が幸せだろう、そう思っていた。
だから、あの時、国を守るために命をかけたことは後悔していない。だけど、ルーカス様の隣で見届けられないことが心残りで悲しかった。
リヴィアの記憶を思い出した今、国の平和を見届けられても、ルーカス様の隣にいられないのは変わらない。
そんな現実を急に突きつけられて、ふいに悲しくなった。でも。
「ルーカスが幸せならいっかー」
部屋に戻り、自分のベッドの上でしばらく昔を思い出していた私は、天井を見上げる。
リリアとして今度は穏やかに人生過ごせるなんて幸せだよね! しかもルーカスの国で!
『リヴィア』の気持ちを抱えながらも、持ち前の何とかなる精神で、私は気持ちを切り替えたのだった。
「リリア」
ベッドの上でゴロゴロしていると、トロワが光に包まれて、空中に現れた。
「トロワ、お帰り! どうだった?」
私が記憶を取り戻したことに理由があるのか気になって、私は帰って来たばかりのトロワを受け止めて顔を覗き込んだ。
「最近、魔物が活発になっているんだ。もしかしたらリディアの張った結界に亀裂が生じているかもしれねーって。それに魂が反応したのかもって」
「何ですって?!」
トロワの言葉に思わずギョッとする。
私が命をかけて張った結界が……
「あれから10年だからなー。でもリヴィアの力だからこそ、10年も保っていたんだ。すげーことだよ?」
暗い表情をした私を元気づけるようにトロワがモフモフの手で私の頬に触れる。
「でも……」
「それに、まだ壊れては無い。それに、新しい聖女もいるしな? リリアは安心して暮らしな!」
ニカッと笑うトロワの手が温かくて、私は安心する。自分の手を添えて、トロワに笑顔を向けた。
「ありがとう」
私がそう言うと、トロワは私の手から離れ、ベッドの上にスタッと降り立った。
「で、だ。 リリア、また俺と契約して?」
「へっ?」
契約とは従属のことだろうか。でも私は今世は聖女ではない。
「私、トロワとは友達だと思ってるよ? 側にいてくれたら嬉しいけど、トロワも自由にして良いんだよ?」
おずおずと私が言えば、トロワはしっぽでペシッと私の身体を叩いた。……痛くは無い。可愛いだけなのだけど。
「バカ! リリア! 俺は、またお前の側にいたいんだよ。まさかまたこうやって話せるなんて、夢にも思わなかった。だから……」
「でも私、聖女でも無いのに……」
「女神様から許可は取った」
「ええ……」
トロワの行動力に思わず驚いてしまう。
でも、ここまで言ってくれているトロワに甘えても良いのかな……?
トロワの気持ちが嬉しくて。つい涙ぐんでしまう。
「じゃあ、トロワ、お願い?」
「任せとけ!」
トロワはウインクをすると、契約の光を発動させた。
「俺、光の精霊トロワはリリア・フォークスを主と認める」
「リリア・フォークスの名において、トロワを我の従属とする」
眩しい光に包まれ、私の両手とトロワの両手が重なり合うと、その光は吸収するように手の中に収まっていった。
そっと目を開けると、満面の笑みのトロワがいた。
「またずっと一緒だ!」
「うん!」
私は再び側にいてくれる大好きな友達を抱きしめた。