生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
40.父の気持ち2
流石に材料が揃わなかったので、お屋敷のメイドさんに買いに行ってもらい、私はマフィン作りを始めた。
トロワはキッチンの床で寝転びながら応援だけ。
ユーグも私の見張りをしないといけないので、助手をしてもらうことにした。
「鴨のロースト……? マフィンですよね?」
材料を見たユーグの顔がとても不安そうだ。
ふふ、懐かしい反応だなあ。
「マフィンにも、お食事マフィンというのがあって、美味しいんだよ?」
「はあ……自分は甘いのが好きですけどねえ」
ユーグは信じられない、といった顔をしている。
まあ、マフィンはお菓子だと思っている人がほとんどだしね。
「リリア様、そんなのも作れたんですね。今まで作らなかったのには理由があるんですか?」
いきなり核心をついたユーグの質問に、一瞬手を止めてしまう。
「みんな、マフィンは甘い物だと思っているでしょう? だから食べてもらいやすいように、ね」
「そうですか……」
ちょっと苦しかったかしら。お食事マフィンは結局、ルーカスのために考案した、この鴨のマフィン一つだけだった。『リヴィア』に繋がるものだし、何となく作れないでいた。
そんなことを思いながら、ユーグの顔を見ると、彼は完全に納得した感じではなかった。
「じゃあ、今作るのには理由があるんですか?」
う、鋭い……!
「今は沢山作らないし、好評だったらまた作ろうかなあ、って……!」
私は思いっきり笑顔でユーグに答えた。
「試作ってことですね!! リリア様が作る物なら美味しいはずだし、光栄です!」
ユーグは良い方に取ってくれたみたいで、いつもの人懐こい笑顔で言った。あまり深く突っ込まないでくれて、私はホッとした。
ユーグは袖をまくりながら、「楽しみだなー」と鼻歌を歌い始めた。
安心した私は、そんな彼を微笑ましく見ながら、すぐ側のオレンジを手にした。
まずはソース作りから!
「え?! 食事と言いながら、オレンジ?!」
ソースを作り始めた私の隣で、ユーグが悲鳴を上げた。
「もう、ユーグ! うるさい! 黙ってなさい!」
私は隣でやいやい言うユーグに文句を言いながらも、何とか鴨のマフィンを作り上げた。
ガコン
オーブンから取り出したマフィンは、美味しそうに焼き上がっている。
「美味しそうな匂いですねえ〜」
散々悲鳴をあげていたくせに、ユーグはよだれを垂らしそうな勢いでうっとりとしていた。
「マフィン食わせろー!」
「はいはい」
マフィンを催促するトロワにマフィンを差し出すと、美味しそうにがっついた。
「あ、トロワずるい! 僕も! リリア様!」
「はいはい、どうぞ」
とりあえず食堂に移動した私たちは、メイドさんに紅茶を入れてもらい、マフィンでティータイムにすることにした。
久しぶりに作ったけど、レシピもちゃんと覚えていたし、味も大丈夫なはず。
「いっただきまーす!」
元気よく挨拶をし、マフィンを口に運ぶユーグを見守っていると、彼は顔を輝かせた。
「……! 美味しいです!!」
彼の喜ぶ姿に、懐かしい記憶が一気に蘇った。
「……ありがとう」
その懐かしい思いを胸に、私はそっと目を閉じた。
「リリア様?」
急に静かになった私を気遣うようにユーグが声をかけてくれた。
「美味しいって言ってくれて、嬉しくて! 私もいただきまーす!」
私はユーグに笑顔で返すと、マフィンにかぶりついた。
うん!あの時と同じに出来てる!
そんな私を見て、ユーグもマフィンに視線を戻し、私たちは一緒になって鴨のマフィンを堪能した。
「これは隊長のためのものなんですね」
皿に残ったマフィンを見てユーグが言った。
「わかった?」
そりゃこの流れだとそう思うのは当然だよね。
「はい。でも、隊長は甘いもの嫌いじゃないですよね? 鴨が好きとか?」
「まあ、そんな所かな」
私の返答にユーグはそれ以上聞いてこなかった。
そうしてティータイムの時間はあっという間に過ぎていき、片付けを終え、私はまた部屋で過ごした。
夕食の時間になってもアレクは帰って来なくて、私はユーグと一緒に食事をした。
「今日は早めに帰って来るって言ってましたからそのうち帰ってくると思いますよー」
ユーグにアレクの予定を確認して、私は再び部屋に籠もった。
私の頭はとっくに冷えている。そもそも、冷やすことなんて無い。むしろ、アレクの頭が冷えていることを願った。
ドキドキしながら私はアレクの帰宅を待った。
「隊長、お帰りなさい」
玄関の方でユーグの声がすると、私は急いで部屋を出た。
「お父様、お帰りなさい……!」
急いで走ってきた私を見たアレクは、ふわりと笑って、私を抱き上げた。
「ただいま、リリア。迎えてくれるなんて嬉しいな」
いつもの優しいお父様の顔。
今なら話を聞いてくれるかもしれない。
「あの、お父様、ルーカス様のことですが」
「その話は聞きたくない!」
すぐさま、ピシャリとアレクの拒絶する声が玄関に響いた。
「ごめんよ、リリア。疲れているから、また明日ね」
アレクは取り繕うようにそう言うと、私を床に下ろした。
「ユーグ、リリアを頼んだぞ」
「はい……」
アレクはユーグにそれだけ言うと、自室に向かって行ってしまった。
何で……?何で何も聞こうとしてくれないの?
「リリア様、部屋に戻りましょうか」
申し訳無さそうにユーグが私の肩に手を置いてきたけど、私はそれを振り払って走り出した。
これじゃあいつまでたっても前に進まないじゃない!
アレクを追いかけて走って行った私は、部屋に入ろうとしていた彼と同時に、中に押し入った。
トロワはキッチンの床で寝転びながら応援だけ。
ユーグも私の見張りをしないといけないので、助手をしてもらうことにした。
「鴨のロースト……? マフィンですよね?」
材料を見たユーグの顔がとても不安そうだ。
ふふ、懐かしい反応だなあ。
「マフィンにも、お食事マフィンというのがあって、美味しいんだよ?」
「はあ……自分は甘いのが好きですけどねえ」
ユーグは信じられない、といった顔をしている。
まあ、マフィンはお菓子だと思っている人がほとんどだしね。
「リリア様、そんなのも作れたんですね。今まで作らなかったのには理由があるんですか?」
いきなり核心をついたユーグの質問に、一瞬手を止めてしまう。
「みんな、マフィンは甘い物だと思っているでしょう? だから食べてもらいやすいように、ね」
「そうですか……」
ちょっと苦しかったかしら。お食事マフィンは結局、ルーカスのために考案した、この鴨のマフィン一つだけだった。『リヴィア』に繋がるものだし、何となく作れないでいた。
そんなことを思いながら、ユーグの顔を見ると、彼は完全に納得した感じではなかった。
「じゃあ、今作るのには理由があるんですか?」
う、鋭い……!
「今は沢山作らないし、好評だったらまた作ろうかなあ、って……!」
私は思いっきり笑顔でユーグに答えた。
「試作ってことですね!! リリア様が作る物なら美味しいはずだし、光栄です!」
ユーグは良い方に取ってくれたみたいで、いつもの人懐こい笑顔で言った。あまり深く突っ込まないでくれて、私はホッとした。
ユーグは袖をまくりながら、「楽しみだなー」と鼻歌を歌い始めた。
安心した私は、そんな彼を微笑ましく見ながら、すぐ側のオレンジを手にした。
まずはソース作りから!
「え?! 食事と言いながら、オレンジ?!」
ソースを作り始めた私の隣で、ユーグが悲鳴を上げた。
「もう、ユーグ! うるさい! 黙ってなさい!」
私は隣でやいやい言うユーグに文句を言いながらも、何とか鴨のマフィンを作り上げた。
ガコン
オーブンから取り出したマフィンは、美味しそうに焼き上がっている。
「美味しそうな匂いですねえ〜」
散々悲鳴をあげていたくせに、ユーグはよだれを垂らしそうな勢いでうっとりとしていた。
「マフィン食わせろー!」
「はいはい」
マフィンを催促するトロワにマフィンを差し出すと、美味しそうにがっついた。
「あ、トロワずるい! 僕も! リリア様!」
「はいはい、どうぞ」
とりあえず食堂に移動した私たちは、メイドさんに紅茶を入れてもらい、マフィンでティータイムにすることにした。
久しぶりに作ったけど、レシピもちゃんと覚えていたし、味も大丈夫なはず。
「いっただきまーす!」
元気よく挨拶をし、マフィンを口に運ぶユーグを見守っていると、彼は顔を輝かせた。
「……! 美味しいです!!」
彼の喜ぶ姿に、懐かしい記憶が一気に蘇った。
「……ありがとう」
その懐かしい思いを胸に、私はそっと目を閉じた。
「リリア様?」
急に静かになった私を気遣うようにユーグが声をかけてくれた。
「美味しいって言ってくれて、嬉しくて! 私もいただきまーす!」
私はユーグに笑顔で返すと、マフィンにかぶりついた。
うん!あの時と同じに出来てる!
そんな私を見て、ユーグもマフィンに視線を戻し、私たちは一緒になって鴨のマフィンを堪能した。
「これは隊長のためのものなんですね」
皿に残ったマフィンを見てユーグが言った。
「わかった?」
そりゃこの流れだとそう思うのは当然だよね。
「はい。でも、隊長は甘いもの嫌いじゃないですよね? 鴨が好きとか?」
「まあ、そんな所かな」
私の返答にユーグはそれ以上聞いてこなかった。
そうしてティータイムの時間はあっという間に過ぎていき、片付けを終え、私はまた部屋で過ごした。
夕食の時間になってもアレクは帰って来なくて、私はユーグと一緒に食事をした。
「今日は早めに帰って来るって言ってましたからそのうち帰ってくると思いますよー」
ユーグにアレクの予定を確認して、私は再び部屋に籠もった。
私の頭はとっくに冷えている。そもそも、冷やすことなんて無い。むしろ、アレクの頭が冷えていることを願った。
ドキドキしながら私はアレクの帰宅を待った。
「隊長、お帰りなさい」
玄関の方でユーグの声がすると、私は急いで部屋を出た。
「お父様、お帰りなさい……!」
急いで走ってきた私を見たアレクは、ふわりと笑って、私を抱き上げた。
「ただいま、リリア。迎えてくれるなんて嬉しいな」
いつもの優しいお父様の顔。
今なら話を聞いてくれるかもしれない。
「あの、お父様、ルーカス様のことですが」
「その話は聞きたくない!」
すぐさま、ピシャリとアレクの拒絶する声が玄関に響いた。
「ごめんよ、リリア。疲れているから、また明日ね」
アレクは取り繕うようにそう言うと、私を床に下ろした。
「ユーグ、リリアを頼んだぞ」
「はい……」
アレクはユーグにそれだけ言うと、自室に向かって行ってしまった。
何で……?何で何も聞こうとしてくれないの?
「リリア様、部屋に戻りましょうか」
申し訳無さそうにユーグが私の肩に手を置いてきたけど、私はそれを振り払って走り出した。
これじゃあいつまでたっても前に進まないじゃない!
アレクを追いかけて走って行った私は、部屋に入ろうとしていた彼と同時に、中に押し入った。