生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
42.父の気持ち4
「お久しぶりです。リヴィア様」
「アレク……」
いつもの娘を溺愛する表情とは違う、どこか懐かしい笑顔に、私は涙が溢れる。
「懐かしいですね、鴨のマフィン……。初めて食べた時は感動しましたが……。ルーカスに作るついでとは言え、私もリヴィア様のマフィンを楽しみにしていたものです」
穏やかに笑いながら話すアレクに、『リヴィア』の頃に一気に戻ったような感覚になる。
「……アレク、あなたの……あなたたちだけのリリアだったはずなのに……ごめんなさい」
「謝らないでください」
私はリリアだけど、何だか二人の大切な娘を『リヴィア』が乗っ取ったようで、申し訳なくて、アレクに頭を下げて謝罪した。
謝って済む話ではないけれど。
そんな私にアレクは優しく語りかけ、頭を上げさせてくれた。
「私たちの娘に生まれてきてくれてありがとうございます。ロザリーが生きていたら、飛び上がって喜んでいただろうなあ」
懐かしむような笑顔でアレクは言った。
確かにロザリーならきっと、笑い飛ばして、まるごと受け入れてくれたに違いない。
「あなたがリリアとして生まれてきたことに間違いはないのでしょう?」
「うん」
私はアレクにトロワのことも含め、女神様からのギフトについて話した。思い出した時のことも。
「そうか、そんなことがあるんだね。信じられないような話だけど、実際にトロワもいるわけだし、それに」
アレクはふわりと私を抱き上げた。
「リリアが嘘をつくわけがないからね」
「……お父様、親バカすぎます」
自信たっぷりに私に言ってみせたアレクに、思わず私も笑みが溢れる。
「リリアが大切な娘であることに変わりはないからね」
アレクはそう言うと、私をぎゅっと抱きしめてくれた。
「ありがとう、お父様」
私はそんなアレクの、父としての愛が嬉しくて泣いた。
『リヴィア』の両親は早くに他界していた。それでも聖女の仕事があり、婚約者のルーカスがいて。
トロワやアレク、周りに沢山の人がいてくれたから寂しくはなかった。
リリアとして生まれ変わって、『リヴィア』の記憶を思い出した今でも、リリアとしての思い出はあるわけで。
優しい母親だったロザリー、私を溺愛してくれるアレク。愛情をたっぷり注ぎ、親の愛を教えてくれたのは二人だ。
「お父様……!」
私は抱きしめてくれているアレクの服をしっかりと掴み、子供のように泣きじゃくった。……子供だけど。
ひとしきり泣いた私は、ようやく落ち着くことが出来た。その間アレクは何も言わず、私を抱きしめ続けてくれていた。
「さて、リリア」
落ち着いた私を抱いたまま、アレクは椅子に腰掛けると、そのまま話し出した。
「君がリヴィア様の生まれ変わりなのはわかったけど、ルーカスへの気持ちはどっちなんだい?」
「どっち?」
アレクは真剣な表情で質問をした。
「ちゃんとリリアとして好きになったのかい? それとも、リヴィア様からの気持ちを引きずって……」
アレクが真剣に私を心配してくれているのが伝わった。だから、私も真剣に想いを吐き出した。
「最初はリリアとして生きる以上、ルーカスの幸せを見届けられれば良いと思っていました。でも……リリアとして一緒に過ごすうちに、好きになってしまったんです」
口にすると、少し恥ずかしい。父親に好きな人の話をするなんて初めてのことだもの。
「そうか」
アレクはそう言うと、ふわりと笑った。
「私はルーカスとリヴィア様が大好きだった。でもリヴィア様が亡くなって、ルーカスが変わってしまって、死にたがっているとわかっていても何も出来なかった」
「そんなことない! アレクはちゃんとルーカスを守ってたよ!」
アレクはずっと私たち二人の側にいて、ルーカスが一人になってからも、変わらず彼の側にい続けてくれた。生きて再会出来たのはアレクがいてくれたからかもしれない。
「ありがとう。でもルーカスを変えたのはリリアだ」
「私?」
「二人が惹かれあっていくのは見ていてわかった。まるでリヴィア様とルーカスを見ているようだったからね」
アレクはそう言うと、父親の顔に戻って言った。
「私はリリアに普通の女の子として生きて欲しかった。ルーカスを選べばそうはいかない。それでも良いのかい?」
真剣な問に、私も娘としてきっぱりと答える。
「はい。私は、ルーカスと一緒に生きていきたい」
しばらくお互いに見つめ合う時間が過ぎ、最初にアレクがうなだれた。
「はあーーー、ついに娘が手元を離れるのかあーー」
いつもの親バカアレクに戻った彼は、私の手を握りしめて言った。
「幸せになって欲しいリリア」
「……、はい!」
父親として娘の幸せを願う言葉に、私はとびきりの笑顔で返事をした。
「ただし! 婚約は認めるけど、成人して結婚するまではまだ私のリリアでいてね?」
「お父様ったら」
椅子の上でぎゅっと抱きしめるアレクに、クスクスと笑っていると、彼は涙目で言った。
「ルーカスみたいなおじさんで本当に良いの?」
「もう! お父様ったら!」
冗談なのか本気なのか、アレクはそんなことを言った。
私はアレクの膝の上で、「寂しいな」「ルーカスは良いやつだけども」「清いお付き合いで!」と言ったお小言を永遠と聞かされたのだった。
「アレク……」
いつもの娘を溺愛する表情とは違う、どこか懐かしい笑顔に、私は涙が溢れる。
「懐かしいですね、鴨のマフィン……。初めて食べた時は感動しましたが……。ルーカスに作るついでとは言え、私もリヴィア様のマフィンを楽しみにしていたものです」
穏やかに笑いながら話すアレクに、『リヴィア』の頃に一気に戻ったような感覚になる。
「……アレク、あなたの……あなたたちだけのリリアだったはずなのに……ごめんなさい」
「謝らないでください」
私はリリアだけど、何だか二人の大切な娘を『リヴィア』が乗っ取ったようで、申し訳なくて、アレクに頭を下げて謝罪した。
謝って済む話ではないけれど。
そんな私にアレクは優しく語りかけ、頭を上げさせてくれた。
「私たちの娘に生まれてきてくれてありがとうございます。ロザリーが生きていたら、飛び上がって喜んでいただろうなあ」
懐かしむような笑顔でアレクは言った。
確かにロザリーならきっと、笑い飛ばして、まるごと受け入れてくれたに違いない。
「あなたがリリアとして生まれてきたことに間違いはないのでしょう?」
「うん」
私はアレクにトロワのことも含め、女神様からのギフトについて話した。思い出した時のことも。
「そうか、そんなことがあるんだね。信じられないような話だけど、実際にトロワもいるわけだし、それに」
アレクはふわりと私を抱き上げた。
「リリアが嘘をつくわけがないからね」
「……お父様、親バカすぎます」
自信たっぷりに私に言ってみせたアレクに、思わず私も笑みが溢れる。
「リリアが大切な娘であることに変わりはないからね」
アレクはそう言うと、私をぎゅっと抱きしめてくれた。
「ありがとう、お父様」
私はそんなアレクの、父としての愛が嬉しくて泣いた。
『リヴィア』の両親は早くに他界していた。それでも聖女の仕事があり、婚約者のルーカスがいて。
トロワやアレク、周りに沢山の人がいてくれたから寂しくはなかった。
リリアとして生まれ変わって、『リヴィア』の記憶を思い出した今でも、リリアとしての思い出はあるわけで。
優しい母親だったロザリー、私を溺愛してくれるアレク。愛情をたっぷり注ぎ、親の愛を教えてくれたのは二人だ。
「お父様……!」
私は抱きしめてくれているアレクの服をしっかりと掴み、子供のように泣きじゃくった。……子供だけど。
ひとしきり泣いた私は、ようやく落ち着くことが出来た。その間アレクは何も言わず、私を抱きしめ続けてくれていた。
「さて、リリア」
落ち着いた私を抱いたまま、アレクは椅子に腰掛けると、そのまま話し出した。
「君がリヴィア様の生まれ変わりなのはわかったけど、ルーカスへの気持ちはどっちなんだい?」
「どっち?」
アレクは真剣な表情で質問をした。
「ちゃんとリリアとして好きになったのかい? それとも、リヴィア様からの気持ちを引きずって……」
アレクが真剣に私を心配してくれているのが伝わった。だから、私も真剣に想いを吐き出した。
「最初はリリアとして生きる以上、ルーカスの幸せを見届けられれば良いと思っていました。でも……リリアとして一緒に過ごすうちに、好きになってしまったんです」
口にすると、少し恥ずかしい。父親に好きな人の話をするなんて初めてのことだもの。
「そうか」
アレクはそう言うと、ふわりと笑った。
「私はルーカスとリヴィア様が大好きだった。でもリヴィア様が亡くなって、ルーカスが変わってしまって、死にたがっているとわかっていても何も出来なかった」
「そんなことない! アレクはちゃんとルーカスを守ってたよ!」
アレクはずっと私たち二人の側にいて、ルーカスが一人になってからも、変わらず彼の側にい続けてくれた。生きて再会出来たのはアレクがいてくれたからかもしれない。
「ありがとう。でもルーカスを変えたのはリリアだ」
「私?」
「二人が惹かれあっていくのは見ていてわかった。まるでリヴィア様とルーカスを見ているようだったからね」
アレクはそう言うと、父親の顔に戻って言った。
「私はリリアに普通の女の子として生きて欲しかった。ルーカスを選べばそうはいかない。それでも良いのかい?」
真剣な問に、私も娘としてきっぱりと答える。
「はい。私は、ルーカスと一緒に生きていきたい」
しばらくお互いに見つめ合う時間が過ぎ、最初にアレクがうなだれた。
「はあーーー、ついに娘が手元を離れるのかあーー」
いつもの親バカアレクに戻った彼は、私の手を握りしめて言った。
「幸せになって欲しいリリア」
「……、はい!」
父親として娘の幸せを願う言葉に、私はとびきりの笑顔で返事をした。
「ただし! 婚約は認めるけど、成人して結婚するまではまだ私のリリアでいてね?」
「お父様ったら」
椅子の上でぎゅっと抱きしめるアレクに、クスクスと笑っていると、彼は涙目で言った。
「ルーカスみたいなおじさんで本当に良いの?」
「もう! お父様ったら!」
冗談なのか本気なのか、アレクはそんなことを言った。
私はアレクの膝の上で、「寂しいな」「ルーカスは良いやつだけども」「清いお付き合いで!」と言ったお小言を永遠と聞かされたのだった。