生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
44.お披露目式
お披露目式の会場まで馬車でたどり着くと、会場の入口ではイスランを連れたルーカスが待っていた。
馬車の扉が開かれ、ルーカスの手が差し出され、私はそこにそっと手を置いた。
思えば、公式な場は、リリアにとっては初めてだ。
正装をしたルーカスは、いつもよりカッチリとしていて、カッコいい。前髪を上げ、大人の色気が漂っている。
ルーカスの手の上に乗せた、自分の小さな手を見て、急に恥ずかしさがこみ上げてくる。
私、こんな素敵なルーカスの隣に立って大丈夫かしら?!
ぐるぐると、そんなことを思い悩んでいると、ルーカスから吐息がもれた。
「綺麗だ、リリア……。ここでキスしたいくらいに」
「!」
私の心配を他所に、ルーカスからは甘い言葉が吐き出された。
彼の表情を見れば、本気なのは伝わってくる。
熱を帯びた瞳と、甘いうっとりとした表情に、思わず見惚れるも、先程の言葉を思い返して、私の顔は赤面した。
「こ、ここではダメですからね!」
「わかっている」
慌てる私に、ルーカスは余裕な表情で微笑むと、私の手の甲にキスを落とした。
「今はこれで我慢する」
不敵な笑みでこちらを見上げたルーカスに、増々私は赤くなった。
大人の余裕なのか、いつもこちらが振り回させて悔しい。
「おい、ここじゃなくてもダメだからな」
いつまでも馬車を降りない私の後ろから、アレクが顔を出して言った。
アレクの存在忘れてた……!
「ちっ」
ルーカスはアレクの顔を見るなり、舌打ちをした。
とにかく、私はルーカス様に手を引かれながら馬車を降りた。
……身長が伸びてきたものの、ルーカスとはまだまだ差があり、これはエスコートというより、手を繋がれている子供……。
つい忘れてしまうけど、これが現実なんだわ……。婚約者と言いながら、ルーカスとの距離はこんなにも遠い。
改めて自分がまだ子供だと思い知る。
そんなしょんぼりした気持ちでいると、突然ルーカスが私をふわりと抱き上げた。
お、お姫様だっこ!!
「ルーカス?!」
驚く私に、ルーカスはおでこを付けて言った。
「君は私の唯一だ。堂々としていろ」
ルーカスは落ち込んでいた私に、またしても甘い言葉をくれた。その言葉が嬉しくて、私も笑顔になった。
いつもは怒って入ってくるアレクも、後ろで私たちを見守っていた。
そして、ルーカスに抱きかかえられたまま、私はお披露目式の会場へと入って行った。
会場は広く、沢山の人たちが私たちの入場に注目していた。
うう、恥ずかしい。こんな抱きかかえられたまま、良いのかしら?
私は顔を赤くしながら、ルーカスの方を見るも、彼は堂々としたものだ。
大人の余裕、さすが王族、と言ったところか。
……初めて会った時は情けない人だったのに、随分立派な人になったなあ。ううん、ルーカスは最初から素敵な男の人だった。『リヴィア』が隠させていただけ。
短いこの半年間の出来事が濃密で、私はそれを思い返してニヨニヨとした。
「何を笑っているんだ?」
そんな私に気付いたルーカスが至近距離で聞いてくる。
抱きかかえられているせいなのか、いちいち距離が近い。
「ルーカスが素敵で、幸せだなあって思っていたの」
「そ、そうか」
それだけ言うと、ルーカスは顔を背けてしまった。よく見ると、顔が赤い。
そんなルーカスが愛おしくて嬉しかった。
勝手に一人で落ち込んでいたけど、ルーカスはきちんと私を見てくれている。
うん、しっかりしろ!
ルーカスからこんなにも愛を受けているのに、勝手に自信を無くしそうになっていた自分に喝を入れると、ルーカスに言った。
「ルーカス、下ろして」
私の表情を見たルーカスは、口の端を少し上げて笑うと、私を静かに下ろした。
床に足をつけた私は、ルーカスの瞳と同じ色のドレスの端を持ち、ふわりと会場の人たちに向かってお辞儀をした。
瞬間、会場には拍手が起こった。
「聖女様!」
「ルーカス様、リリア様、万歳!」
私たち二人を歓迎する言葉が沢山投げかけられた。
「皆、お前たちの働きに感謝しているのだよ」
その言葉の主に、会場にいた人たち全員が跪いた。国王陛下だ。
ルーカス様と私も深くお辞儀をした。
陛下の顔色はすっかり良くなったようだ。
「リリア、そなたのポーションのおかげでこんなにも動けるようになった。感謝するぞ」
「回復に向かわれて何よりです」
陛下の言葉に、周りからは「リリア様が!」「やはり素晴らしい聖女だ!」と言った言葉が聞こえてきた。
陛下はそんな周りの言葉に満足そうに微笑んだ。
わざわざ公の場で話したのは、私のためにわざとだと理解する。
アレクにも聞いていたけど、陛下の中では、次期王にはルーカスで決まっているみたいだ。
陛下に挨拶を終えると、私たちは皆に紹介された。
「私の息子がようやく新しい人生を歩む。素晴らしい聖女と婚約出来たのは喜ばしいことだ。皆、ルーカスとリリアを盛り立ててやって欲しい」
陛下の言葉に、その場にいた人たちの歓声が上がった。
「事実上、ルーカス様が次の王だと公言したようなものですね」
すぐ後ろに控えていたユーグがこそっと耳打ちしてきた。
私たちの婚約のお披露目だけだったはずが、大事になっているようだ。
「またしょんぼりしないように見張っててくださいね。まあ、リリア様の方が長生きするから大丈夫ですね」
「おい、聞こえているぞ」
ルーカスの後ろに控えていたイスランが、表情を変えずに私に言った。
ルーカス様は突っ込みながらも、少しバツが悪いような笑顔で。
「リリアには情けない姿を見せていたな」
頭をかきながら、子犬のような表情を見せるルーカスに、思わず吹き出した。
「今更ですか?!」
笑い合う幸せな空間。その場所に来たのは、彼だった。
「兄上、リリア様、おめでとうございます」
「ジェイル……」
馬車の扉が開かれ、ルーカスの手が差し出され、私はそこにそっと手を置いた。
思えば、公式な場は、リリアにとっては初めてだ。
正装をしたルーカスは、いつもよりカッチリとしていて、カッコいい。前髪を上げ、大人の色気が漂っている。
ルーカスの手の上に乗せた、自分の小さな手を見て、急に恥ずかしさがこみ上げてくる。
私、こんな素敵なルーカスの隣に立って大丈夫かしら?!
ぐるぐると、そんなことを思い悩んでいると、ルーカスから吐息がもれた。
「綺麗だ、リリア……。ここでキスしたいくらいに」
「!」
私の心配を他所に、ルーカスからは甘い言葉が吐き出された。
彼の表情を見れば、本気なのは伝わってくる。
熱を帯びた瞳と、甘いうっとりとした表情に、思わず見惚れるも、先程の言葉を思い返して、私の顔は赤面した。
「こ、ここではダメですからね!」
「わかっている」
慌てる私に、ルーカスは余裕な表情で微笑むと、私の手の甲にキスを落とした。
「今はこれで我慢する」
不敵な笑みでこちらを見上げたルーカスに、増々私は赤くなった。
大人の余裕なのか、いつもこちらが振り回させて悔しい。
「おい、ここじゃなくてもダメだからな」
いつまでも馬車を降りない私の後ろから、アレクが顔を出して言った。
アレクの存在忘れてた……!
「ちっ」
ルーカスはアレクの顔を見るなり、舌打ちをした。
とにかく、私はルーカス様に手を引かれながら馬車を降りた。
……身長が伸びてきたものの、ルーカスとはまだまだ差があり、これはエスコートというより、手を繋がれている子供……。
つい忘れてしまうけど、これが現実なんだわ……。婚約者と言いながら、ルーカスとの距離はこんなにも遠い。
改めて自分がまだ子供だと思い知る。
そんなしょんぼりした気持ちでいると、突然ルーカスが私をふわりと抱き上げた。
お、お姫様だっこ!!
「ルーカス?!」
驚く私に、ルーカスはおでこを付けて言った。
「君は私の唯一だ。堂々としていろ」
ルーカスは落ち込んでいた私に、またしても甘い言葉をくれた。その言葉が嬉しくて、私も笑顔になった。
いつもは怒って入ってくるアレクも、後ろで私たちを見守っていた。
そして、ルーカスに抱きかかえられたまま、私はお披露目式の会場へと入って行った。
会場は広く、沢山の人たちが私たちの入場に注目していた。
うう、恥ずかしい。こんな抱きかかえられたまま、良いのかしら?
私は顔を赤くしながら、ルーカスの方を見るも、彼は堂々としたものだ。
大人の余裕、さすが王族、と言ったところか。
……初めて会った時は情けない人だったのに、随分立派な人になったなあ。ううん、ルーカスは最初から素敵な男の人だった。『リヴィア』が隠させていただけ。
短いこの半年間の出来事が濃密で、私はそれを思い返してニヨニヨとした。
「何を笑っているんだ?」
そんな私に気付いたルーカスが至近距離で聞いてくる。
抱きかかえられているせいなのか、いちいち距離が近い。
「ルーカスが素敵で、幸せだなあって思っていたの」
「そ、そうか」
それだけ言うと、ルーカスは顔を背けてしまった。よく見ると、顔が赤い。
そんなルーカスが愛おしくて嬉しかった。
勝手に一人で落ち込んでいたけど、ルーカスはきちんと私を見てくれている。
うん、しっかりしろ!
ルーカスからこんなにも愛を受けているのに、勝手に自信を無くしそうになっていた自分に喝を入れると、ルーカスに言った。
「ルーカス、下ろして」
私の表情を見たルーカスは、口の端を少し上げて笑うと、私を静かに下ろした。
床に足をつけた私は、ルーカスの瞳と同じ色のドレスの端を持ち、ふわりと会場の人たちに向かってお辞儀をした。
瞬間、会場には拍手が起こった。
「聖女様!」
「ルーカス様、リリア様、万歳!」
私たち二人を歓迎する言葉が沢山投げかけられた。
「皆、お前たちの働きに感謝しているのだよ」
その言葉の主に、会場にいた人たち全員が跪いた。国王陛下だ。
ルーカス様と私も深くお辞儀をした。
陛下の顔色はすっかり良くなったようだ。
「リリア、そなたのポーションのおかげでこんなにも動けるようになった。感謝するぞ」
「回復に向かわれて何よりです」
陛下の言葉に、周りからは「リリア様が!」「やはり素晴らしい聖女だ!」と言った言葉が聞こえてきた。
陛下はそんな周りの言葉に満足そうに微笑んだ。
わざわざ公の場で話したのは、私のためにわざとだと理解する。
アレクにも聞いていたけど、陛下の中では、次期王にはルーカスで決まっているみたいだ。
陛下に挨拶を終えると、私たちは皆に紹介された。
「私の息子がようやく新しい人生を歩む。素晴らしい聖女と婚約出来たのは喜ばしいことだ。皆、ルーカスとリリアを盛り立ててやって欲しい」
陛下の言葉に、その場にいた人たちの歓声が上がった。
「事実上、ルーカス様が次の王だと公言したようなものですね」
すぐ後ろに控えていたユーグがこそっと耳打ちしてきた。
私たちの婚約のお披露目だけだったはずが、大事になっているようだ。
「またしょんぼりしないように見張っててくださいね。まあ、リリア様の方が長生きするから大丈夫ですね」
「おい、聞こえているぞ」
ルーカスの後ろに控えていたイスランが、表情を変えずに私に言った。
ルーカス様は突っ込みながらも、少しバツが悪いような笑顔で。
「リリアには情けない姿を見せていたな」
頭をかきながら、子犬のような表情を見せるルーカスに、思わず吹き出した。
「今更ですか?!」
笑い合う幸せな空間。その場所に来たのは、彼だった。
「兄上、リリア様、おめでとうございます」
「ジェイル……」