生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
45.お披露目2
「ジェイル様……」
ルーカスの弟、ジェイル様。婚約者のソフィー様の姿は見えない。どうやら一人で来たようだった。
「ジェイル、お前がポーションに必要な薬草を質の良いものにしようと研究していたのは知っていた」
え?そうなの?!
ルーカスの言葉に驚きつつも、私は二人の会話をじっと聞いた。
「それを辞めてしまった原因もわかっている。しかし、最近になってまた始めたようだな」
「兄上、知って……」
ジェイル様は驚きつつも、何だか嬉しそうな表情をしている。
半年前に会ったときのような険悪な空気は、今は漂っていない。
「リリア様のポーションに役立てばと……」
「ああ。役立っている。ありがとう」
「兄上……!」
ジェイル様は涙を浮かべてルーカスを見つめていた。ねじれていた関係が解れたような、そんな瞬間だった。
「リリア様」
突如、私の方に向き直ったジェイル様にドキッとしつつも、前に向けられた馬鹿にしたような表情ではないことにホッとする。
「あなたが兄上を蘇らせてくれた」
ジェイル様に手をギュッと握られ、彼は私に感謝を示してくれた。
「私は、尊敬する兄上がすっかり腑抜けてしまって許せなかった。私が敵対することで、兄上は抗ってくれると思ったが、溝が深まるばかりだった」
そうだったのね。ジェイル様はルーカスを元の彼に戻したいと願っていたのね。
それが拗れて兄弟仲が険悪になってしまったのは悲しいことだ。
「リヴィア様が亡くなって十年……。その間に私もすっかりダメになってしまったようだ」
「そんなこと……」
ジェイル様の言葉に否定するも、彼は首を横に振って言った。
「兄上に奮い立ってもらおうとしていたはずなのに、周りに崇められて、自分が兄上の代わりになれると思い上がった時もあった。いつの間にか本来の目的を見失っていたんだ……」
ルーカス様の言った通り、ジェイル様は馬鹿では無かった。ルーカス様が引き戻す前に、自分で気付いて、ちゃんと向き合っていた。
「リリア様、貴方が兄上を引き戻してくれた。そして、二人の活躍を耳にするたび、自分もこのままではいけないと思った」
ジェイル様は私の握った手をそのまま、その場に跪くと、頭を下げた。
「リリア様に無礼な態度を取ったこと、どうかお許しください」
「ジェイル様……! 頭を上げてください!」
そう言うも、ジェイル様は頭を下げたまま。困った私は、ルーカスをちらりと見た。
その視線を受け取ったルーカスも、困ったように微笑んだが、すぐにジェイル様の横に来てくれた。
「リリアが困っているだろう。ジェイル、私も不甲斐なくてすまなかった」
「兄上……」
ルーカスの言葉にジェイル様が顔を上げた。
「演技ってことはないですかね?」
ユーグがこっそりと私に言ってきたが、そうは見えなかった。
「ううん、きっと大丈夫」
私の言葉に、ユーグも笑って二人の兄弟を見つめた。
「本当ですよ! 兄上には私の言葉なんて届かなくて、いつも投げやりで」
「す、すまなかった」
「あんなにカッコよかった兄上が腑抜けのクズになってしまって……私は悲しくて……」
「お前、そこまで言う?」
二人の兄弟のやり取りに、私もユーグも笑って見ていた。
「ジェイル様まで変えてしまわれるとは……あなたは本当に凄い人です」
横にいたイスランが、穏やかに呟いた。
「私は何もしてないよ。二人とも、きっかけがあればいつだって変われたんだから」
「そのきっかけがあなただったんです。魔物からだけじゃない。貴方は国を守ったんですよ」
「そ、そうかな?」
イスランが穏やかな笑顔で私を褒めちぎってくれるので、私は恥ずかしくなった。
でも、二人が手を取り合えば、この国は本当に良いものにしていけると思う。
「二人が仲直りして良かった」
「長い兄弟喧嘩でしたね」
いまだに言い合う二人を見ながらそう言うと、イスランもフッと笑って言った。
この国に期待していないと言いながらも、彼は行く末を案じていた。今、彼の穏やかな笑顔を見られて私は嬉しい。
「ジェイル様!!」
穏やかな空気の中、二人目の来訪者が来たのはその時だった。
ストロベリーブロンドの可愛らしい方。
ジェイル様の婚約者、ソフィー様だ。
相変わらず、宝石をふんだんに付けたドレスをまとい、きらびやかだ。
「ソフィー……、主役のリリア様よりも目立つ格好でどういうつもりだい?」
ルーカスと笑いあっていたジェイル様は、一転、冷たい表情で、ソフィー様の突撃にため息をついた。
「そ、そんなことより……! 私と婚約破棄するって、どういうことですか?!」
ワナワナと震わせる手を握りしめ、ソフィー様はジェイル様に向かって叫んだ。
「こ、婚約破棄????」
その場にいた全員が驚いて、ジェイル様を見た。
「仕事をしない聖女なんて兄上の足を引っ張るだけだし、聖女の婚約自体が争いの種になるからな」
吹っ切れたジェイル様は、あっさりとそんなことを言いのけた。
その言葉を聞いたソフィー様は、身体をもワナワナとさせた。
あ、これは修羅場ってやつですね。
ルーカスの弟、ジェイル様。婚約者のソフィー様の姿は見えない。どうやら一人で来たようだった。
「ジェイル、お前がポーションに必要な薬草を質の良いものにしようと研究していたのは知っていた」
え?そうなの?!
ルーカスの言葉に驚きつつも、私は二人の会話をじっと聞いた。
「それを辞めてしまった原因もわかっている。しかし、最近になってまた始めたようだな」
「兄上、知って……」
ジェイル様は驚きつつも、何だか嬉しそうな表情をしている。
半年前に会ったときのような険悪な空気は、今は漂っていない。
「リリア様のポーションに役立てばと……」
「ああ。役立っている。ありがとう」
「兄上……!」
ジェイル様は涙を浮かべてルーカスを見つめていた。ねじれていた関係が解れたような、そんな瞬間だった。
「リリア様」
突如、私の方に向き直ったジェイル様にドキッとしつつも、前に向けられた馬鹿にしたような表情ではないことにホッとする。
「あなたが兄上を蘇らせてくれた」
ジェイル様に手をギュッと握られ、彼は私に感謝を示してくれた。
「私は、尊敬する兄上がすっかり腑抜けてしまって許せなかった。私が敵対することで、兄上は抗ってくれると思ったが、溝が深まるばかりだった」
そうだったのね。ジェイル様はルーカスを元の彼に戻したいと願っていたのね。
それが拗れて兄弟仲が険悪になってしまったのは悲しいことだ。
「リヴィア様が亡くなって十年……。その間に私もすっかりダメになってしまったようだ」
「そんなこと……」
ジェイル様の言葉に否定するも、彼は首を横に振って言った。
「兄上に奮い立ってもらおうとしていたはずなのに、周りに崇められて、自分が兄上の代わりになれると思い上がった時もあった。いつの間にか本来の目的を見失っていたんだ……」
ルーカス様の言った通り、ジェイル様は馬鹿では無かった。ルーカス様が引き戻す前に、自分で気付いて、ちゃんと向き合っていた。
「リリア様、貴方が兄上を引き戻してくれた。そして、二人の活躍を耳にするたび、自分もこのままではいけないと思った」
ジェイル様は私の握った手をそのまま、その場に跪くと、頭を下げた。
「リリア様に無礼な態度を取ったこと、どうかお許しください」
「ジェイル様……! 頭を上げてください!」
そう言うも、ジェイル様は頭を下げたまま。困った私は、ルーカスをちらりと見た。
その視線を受け取ったルーカスも、困ったように微笑んだが、すぐにジェイル様の横に来てくれた。
「リリアが困っているだろう。ジェイル、私も不甲斐なくてすまなかった」
「兄上……」
ルーカスの言葉にジェイル様が顔を上げた。
「演技ってことはないですかね?」
ユーグがこっそりと私に言ってきたが、そうは見えなかった。
「ううん、きっと大丈夫」
私の言葉に、ユーグも笑って二人の兄弟を見つめた。
「本当ですよ! 兄上には私の言葉なんて届かなくて、いつも投げやりで」
「す、すまなかった」
「あんなにカッコよかった兄上が腑抜けのクズになってしまって……私は悲しくて……」
「お前、そこまで言う?」
二人の兄弟のやり取りに、私もユーグも笑って見ていた。
「ジェイル様まで変えてしまわれるとは……あなたは本当に凄い人です」
横にいたイスランが、穏やかに呟いた。
「私は何もしてないよ。二人とも、きっかけがあればいつだって変われたんだから」
「そのきっかけがあなただったんです。魔物からだけじゃない。貴方は国を守ったんですよ」
「そ、そうかな?」
イスランが穏やかな笑顔で私を褒めちぎってくれるので、私は恥ずかしくなった。
でも、二人が手を取り合えば、この国は本当に良いものにしていけると思う。
「二人が仲直りして良かった」
「長い兄弟喧嘩でしたね」
いまだに言い合う二人を見ながらそう言うと、イスランもフッと笑って言った。
この国に期待していないと言いながらも、彼は行く末を案じていた。今、彼の穏やかな笑顔を見られて私は嬉しい。
「ジェイル様!!」
穏やかな空気の中、二人目の来訪者が来たのはその時だった。
ストロベリーブロンドの可愛らしい方。
ジェイル様の婚約者、ソフィー様だ。
相変わらず、宝石をふんだんに付けたドレスをまとい、きらびやかだ。
「ソフィー……、主役のリリア様よりも目立つ格好でどういうつもりだい?」
ルーカスと笑いあっていたジェイル様は、一転、冷たい表情で、ソフィー様の突撃にため息をついた。
「そ、そんなことより……! 私と婚約破棄するって、どういうことですか?!」
ワナワナと震わせる手を握りしめ、ソフィー様はジェイル様に向かって叫んだ。
「こ、婚約破棄????」
その場にいた全員が驚いて、ジェイル様を見た。
「仕事をしない聖女なんて兄上の足を引っ張るだけだし、聖女の婚約自体が争いの種になるからな」
吹っ切れたジェイル様は、あっさりとそんなことを言いのけた。
その言葉を聞いたソフィー様は、身体をもワナワナとさせた。
あ、これは修羅場ってやつですね。