生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
52.ここから
「今日は六年前に国を救ってくれた聖女様と王様の結婚式だよ!」
「六年の間も愛を育み、今日やっと結ばれるのね、素敵!!」
クローダー王国は今日、かつてない賑わいを見せている。
「お嬢様、お綺麗ですよ」
控室の一室。
フォークス領から準備のために来てくれたマリーが、鏡越しに私を見て言った。
「ありがとう、マリー」
純白のウエディングドレスに身を包んだ私は、晴れて十六歳になった。
あれから、王立学園で沢山のことを学んだ。
全てはルーカスの隣に立てる妃になるため。
「まさかお嬢様が寮に入るなんて。アレク様の泣きようは凄かったですね」
マリーは片手を頬に置いて、ため息をついた。
そう。私は、寮に入ることを選択した。自分への甘えを断ち切るために。
「と言っても、長期休暇のたびに会ってたのにね」
マリーの言葉に、私は苦笑いをした。
アレクやルーカスとはまったく会えない訳ではなかった。
特にルーカスとは手紙のやり取りをしていたのに、会うとお互いの近況を尽き無いほど語り合った。
この六年、色んな人と出会ったけど、私にはやっぱりルーカスしか目に入らなかった。
ルーカスは会う度に心配していたけど、それはこっちもだ。
幸いにも、国を救った王子と聖女のロマンスは貴族にも庶民にも語り継がれ、ルーカスに近付こうする女性はいなかった。
カッコイイのに、ちょっと残念ね?
「お嬢様?」
クスリと笑っていると、マリーが首を傾けていた。
「何でもない!」
私は満面の笑みで答えると、立ち上がり、部屋のドアを開けた。
「リリア」
そこにはお父様、護衛のイスランとユーグが待っていた。
「リリア様、お綺麗です」
「陛下より先に綺麗なリリア様を見て、これは睨まれ案件ですね」
あれから、副隊長だったイスラン自らが私の専属護衛になり、六年を過ごしてきた。
ユーグとも時々会っていたけれど、変わらない口調に思わず笑みが溢れた。
「リリア、幸せになれ」
今日一緒にバージンロードを歩くお父様は、近衛隊の正装で、目に涙を浮かべていた。
「はい」
早すぎる涙に、私も思わずもらい泣きしそうになる。
差し出されたお父様の腕を取り、イスランとユーグに護衛をされながら私たちは聖堂に向かった。
私はこの春に王立学園を卒業をした。そして、一ヶ月も経たないうちに結婚式への運びとなった。だから、卒業してからルーカスとは会えていない。
「リリア様のお気持ちが変わらなかったらすぐに結婚式を、と陛下は一年前から準備を進めていました」
「え? そうなの?!」
イスランの言葉に思わず驚く。
だって、ルーカスと最後に会ったのは、去年の夏の長期休暇の時。
その時は何も言ってなかった。
どうりでウエディングドレスの仕立てが早かったり、招待客のリストアップも最終調整で済んだわけだ。
「ルーカスのやつ、リリアから返事もらうまで、すごい落ち着かなかったなあ」
「まあ、ジェイル様に自身と聖女のロマンスの噂を広めさせるという小賢しい真似までしたんですからね」
「ええ?!」
私の知らない話をお父様とイスランが進める。
「その噂のおかげでルーカス様に言い寄るご令嬢も現れなかったわけで。良かったですね? リリア様」
ユーグはにまにまと私を見ながら言った。
その通りだけど、認めるのは悔しい。
「そもそも、婚約者がいる相手に言い寄る人なんていないでしょ?!」
私がそう言うと、ユーグとイスランは、残念そうな顔でため息をついた。
な、何よ!!
「リリアがそれだけ可愛いってことだなー」
親バカなお父様が何か言っている。
そんな変わらない私たちのやり取りをライオン姿のトロワが後ろから見ていた。
「もう着いたぞー」
トロワに促され、前を見ると、聖堂の入口が目の前にあった。
ルーカスと会ったのは去年の夏。ちょうど一年くらい前だ。
久しぶりに会う緊張で、胸がドキドキとしてくる。
パイプオルガンの厳かな音が鳴り響き、イスランとユーグが扉を開けた。
一歩進んだお父様が腕を差し出す。
私はお父様の腕を取り、バージンロードを歩き出した。
すぐ先には、国王陛下姿のルーカスがこちらを見ていた。
一歩、一歩、とルーカスに近づいていく。
お父様に手を取られると、ルーカスの元に辿り着いたことを実感した。
お父様の手から、ルーカスの手へと私の手が受け渡される。
「リリア、綺麗だ……」
神父様に向き合う直前、ルーカスが私に囁いた。
ルーカスとは毎年会っていたのに、今日は別人のよう。
そのルーカスからの甘い言葉に、胸の高鳴りが治まらない。
神父様の前で私たちは誓い、向き合う。
私のベールが上げられると、すっかり大人の色気を増したルーカスの顔がくっきりと見えた。
「どうしよう……」
「リリア?」
思わず呟いた私の言葉に、ルーカスが心配そうに覗き込んだ。
「これから妻になるのに、私、ルーカスにまた恋をしてしまったみたいな気持ち」
赤くなりながらも正直な気持ちを吐露すれば、一瞬驚いて目を丸くしたルーカスは、破顔した。
「私も一緒だ」
ルーカスは、ガバッと嬉しそうに私を抱きしめると、耳元で囁いた。
「私たちはまだまだこれからだろう? 今度こそ一緒に恋から始めていこう」
ルーカスの言葉に笑顔で返すと、彼は目を細めて、誓いのキスを落とした。
その後、私とルーカスは平和な国を守り続け、家族も出来て幸せに暮らしていくのだけど、それはまだ未来のお話。
私とルーカスの16歳差の恋は始まったばかりなのだから。
「六年の間も愛を育み、今日やっと結ばれるのね、素敵!!」
クローダー王国は今日、かつてない賑わいを見せている。
「お嬢様、お綺麗ですよ」
控室の一室。
フォークス領から準備のために来てくれたマリーが、鏡越しに私を見て言った。
「ありがとう、マリー」
純白のウエディングドレスに身を包んだ私は、晴れて十六歳になった。
あれから、王立学園で沢山のことを学んだ。
全てはルーカスの隣に立てる妃になるため。
「まさかお嬢様が寮に入るなんて。アレク様の泣きようは凄かったですね」
マリーは片手を頬に置いて、ため息をついた。
そう。私は、寮に入ることを選択した。自分への甘えを断ち切るために。
「と言っても、長期休暇のたびに会ってたのにね」
マリーの言葉に、私は苦笑いをした。
アレクやルーカスとはまったく会えない訳ではなかった。
特にルーカスとは手紙のやり取りをしていたのに、会うとお互いの近況を尽き無いほど語り合った。
この六年、色んな人と出会ったけど、私にはやっぱりルーカスしか目に入らなかった。
ルーカスは会う度に心配していたけど、それはこっちもだ。
幸いにも、国を救った王子と聖女のロマンスは貴族にも庶民にも語り継がれ、ルーカスに近付こうする女性はいなかった。
カッコイイのに、ちょっと残念ね?
「お嬢様?」
クスリと笑っていると、マリーが首を傾けていた。
「何でもない!」
私は満面の笑みで答えると、立ち上がり、部屋のドアを開けた。
「リリア」
そこにはお父様、護衛のイスランとユーグが待っていた。
「リリア様、お綺麗です」
「陛下より先に綺麗なリリア様を見て、これは睨まれ案件ですね」
あれから、副隊長だったイスラン自らが私の専属護衛になり、六年を過ごしてきた。
ユーグとも時々会っていたけれど、変わらない口調に思わず笑みが溢れた。
「リリア、幸せになれ」
今日一緒にバージンロードを歩くお父様は、近衛隊の正装で、目に涙を浮かべていた。
「はい」
早すぎる涙に、私も思わずもらい泣きしそうになる。
差し出されたお父様の腕を取り、イスランとユーグに護衛をされながら私たちは聖堂に向かった。
私はこの春に王立学園を卒業をした。そして、一ヶ月も経たないうちに結婚式への運びとなった。だから、卒業してからルーカスとは会えていない。
「リリア様のお気持ちが変わらなかったらすぐに結婚式を、と陛下は一年前から準備を進めていました」
「え? そうなの?!」
イスランの言葉に思わず驚く。
だって、ルーカスと最後に会ったのは、去年の夏の長期休暇の時。
その時は何も言ってなかった。
どうりでウエディングドレスの仕立てが早かったり、招待客のリストアップも最終調整で済んだわけだ。
「ルーカスのやつ、リリアから返事もらうまで、すごい落ち着かなかったなあ」
「まあ、ジェイル様に自身と聖女のロマンスの噂を広めさせるという小賢しい真似までしたんですからね」
「ええ?!」
私の知らない話をお父様とイスランが進める。
「その噂のおかげでルーカス様に言い寄るご令嬢も現れなかったわけで。良かったですね? リリア様」
ユーグはにまにまと私を見ながら言った。
その通りだけど、認めるのは悔しい。
「そもそも、婚約者がいる相手に言い寄る人なんていないでしょ?!」
私がそう言うと、ユーグとイスランは、残念そうな顔でため息をついた。
な、何よ!!
「リリアがそれだけ可愛いってことだなー」
親バカなお父様が何か言っている。
そんな変わらない私たちのやり取りをライオン姿のトロワが後ろから見ていた。
「もう着いたぞー」
トロワに促され、前を見ると、聖堂の入口が目の前にあった。
ルーカスと会ったのは去年の夏。ちょうど一年くらい前だ。
久しぶりに会う緊張で、胸がドキドキとしてくる。
パイプオルガンの厳かな音が鳴り響き、イスランとユーグが扉を開けた。
一歩進んだお父様が腕を差し出す。
私はお父様の腕を取り、バージンロードを歩き出した。
すぐ先には、国王陛下姿のルーカスがこちらを見ていた。
一歩、一歩、とルーカスに近づいていく。
お父様に手を取られると、ルーカスの元に辿り着いたことを実感した。
お父様の手から、ルーカスの手へと私の手が受け渡される。
「リリア、綺麗だ……」
神父様に向き合う直前、ルーカスが私に囁いた。
ルーカスとは毎年会っていたのに、今日は別人のよう。
そのルーカスからの甘い言葉に、胸の高鳴りが治まらない。
神父様の前で私たちは誓い、向き合う。
私のベールが上げられると、すっかり大人の色気を増したルーカスの顔がくっきりと見えた。
「どうしよう……」
「リリア?」
思わず呟いた私の言葉に、ルーカスが心配そうに覗き込んだ。
「これから妻になるのに、私、ルーカスにまた恋をしてしまったみたいな気持ち」
赤くなりながらも正直な気持ちを吐露すれば、一瞬驚いて目を丸くしたルーカスは、破顔した。
「私も一緒だ」
ルーカスは、ガバッと嬉しそうに私を抱きしめると、耳元で囁いた。
「私たちはまだまだこれからだろう? 今度こそ一緒に恋から始めていこう」
ルーカスの言葉に笑顔で返すと、彼は目を細めて、誓いのキスを落とした。
その後、私とルーカスは平和な国を守り続け、家族も出来て幸せに暮らしていくのだけど、それはまだ未来のお話。
私とルーカスの16歳差の恋は始まったばかりなのだから。