生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜
9.結界を張り直そう2
「じゃあ昼食にしようか」
一箇所目の結界を強化し、二箇所目へ移動の途中、お昼どきになったのでアレクが言った。
ルーカス様は馬車で移動し、その周りを近衛隊が固めていた。私はアレクの馬に乗せてもらっていた。
小麦畑が広がる景色を横目に、広い広場になっている所へ馬車や馬を停めた。
私はお弁当を配るお手伝いをした。
騎士たちは思い思いに緑が広がる地面に腰を下ろし、嬉しそうに食事を始めた。
ルーカス様は、木陰にひかれたシートの上に案内され、仏頂面で座っていた。
ご一緒するのは近衛隊長のアレクと、もちろん私……。
うう、さっきので気まずい。
「リリア、おいで」
アレクが笑顔でそんな私を手招きするので、私はおずおずと二人の側へ行った。
「リリアも食べよう」
アレクがそう言って広げられたお弁当を指差した。シェフが作ったサンドイッチ。私はこのサンドイッチが大好きなのだ!
ルーカス様のことはさておき、私はアレクの隣にちょこんと座ると、サンドイッチを頬張った。
「しかし、さっきの結界は何ともなくて良かったね」
サンドイッチを頬張る私の横で、アレクがルーカス様に話しかけた。
一箇所目の結界は揺らいでいるものの、欠損も無く、強化を施すだけで済んだ。だから『リリア』の小さな身体でも対応出来た。
修復と強化を同時に行う力はあるけど、この身体が耐えられない。そんな心配は、トロワが払拭してくれていた。
「俺の力を分け与えるから大丈夫だ」
前回、私を倒れさせてしまったのをトロワは気にしているようだった。
でも精霊の手助けがあれば大丈夫そう!
そう思って、今回の無茶なお達しにも楽観的になれたのだ。
「マフィン食わせろー」
ニャーン、とトロワが鳴くので、私はサンドイッチの手を止めて、自分のバスケットに手を伸ばした。すると、アレクと話していたルーカス様が突然こちらを睨んで来た。
「任務に猫を連れて来ているのか?」
あ、これはヤバイやつだ。
そう思った私は、包み隠さず話すことにした。
「えっと、この子は光の精霊です。私と従属の契約をしています」
「えっ……!!」
私の言葉に驚いたのは、アレク。
そりゃそうよね。飼っていた猫が精霊だったなんて。
ルーカス様がじっとトロワを見つめていると、アレクがポロリと言った。
「リリアが可愛がっていたトロワが精霊だったなんて……いやビックリした。リリアの聖女の力が目覚めたからなのかな?」
瞬間、ルーカス様の表情が変わった。
「おい! お前の精霊はトロワというのか?」
……しまった。ルーカス様は『リヴィア』の精霊の名前を知っていた。
「いや、しかしリヴィアの精霊はライオンだった……」
私の肩を掴み、ブツブツと言うルーカス様。
「トロワは私が名付けましたが、何か?」
こうなったら、「偶然です!」感を出すしかないわ。
私はルーカス様の透き通った青い瞳をじいっと見て、平静を装った。
あんなに好きだった優しい瞳が、今は冷たい。
「偶然か……」
「おい、ルーカス、どうした?」
私の思惑通りに、ポツリと呟いたルーカス様にアレクが間に入って、ルーカス様の手を私の肩からどけてくれた。
「何でもない!」
ルーカス様は不機嫌そうに、また元の場所に座り直して言った。
「精霊と従属の契約をしているなら、一人目の聖女より力が強いのは納得だ」
ルーカス様の、『一人目の聖女』という言葉にドキリとする。きっとルーカス様のご婚約者。
「ソフィー様には精霊すら付いていないからな」
「まあ、アイツには期待していない。好きにすれば良いさ」
アレクとルーカス様の会話に、もう一人の聖女様の名前が、ソフィー様だと知る。
それにしても、何だかルーカス様、投げやり…?
「もう一人の聖女様はどんな方なんですか?」
私の何気ない質問に、アレクは困った顔で笑って、「うーん……」と黙ってしまった。
「聖女の仕事もしないで遊んでいるやつだ」
「ルーカス……!」
代わりにルーカス様が教えてくれたが、その言葉にびっくりする。
え?ルーカス様が、ご婚約者様は遊ばせている?
昔のような厳しさを持ち、十歳の私にも厳しく任務を果たせと言うルーカス様が?
「婚約者様を愛していらっしゃるんですね」
「は?」
気付けば私はそんな言葉を発していた。
「だって、ソフィー様には危険な任務に出さず、穏やかに暮らしていて欲しいってことでしょ?」
「まてまて、何を言っている?」
私の言葉に、ルーカス様が珍しく焦っていた。
「厳しいルーカス様がソフィー様だけに甘いのは、婚約者であるソフィー様を愛していらっしゃるからだと」
私の言葉にルーカス様がブルブルと震えていた。
あ、これ、私、またやっちゃった?
「ははは!! そうなるか。そうだよな。リリアは物知りだなあ!」
何故かまたアレクが吹き出している。
「婚約者じゃない!!」
「え?」
震えていたルーカス様は、眉間にシワを寄せて私に言った。あ、何か昔に戻ったみたい。
「ソフィー様は、ジェイル様の婚約者だよ」
お腹を抱えながら、まだ笑っているアレクが教えてくれた。
「え」
とんだ勘違いをしていた私は、ルーカス様をじっと見つめた。
「あんな女を婚約者と間違えられるなんて不愉快だ!」
と言ってプイ、とそっぽを向いてしまった。
何だかそれが可愛くて。私も思わず笑ってしまった。
一箇所目の結界を強化し、二箇所目へ移動の途中、お昼どきになったのでアレクが言った。
ルーカス様は馬車で移動し、その周りを近衛隊が固めていた。私はアレクの馬に乗せてもらっていた。
小麦畑が広がる景色を横目に、広い広場になっている所へ馬車や馬を停めた。
私はお弁当を配るお手伝いをした。
騎士たちは思い思いに緑が広がる地面に腰を下ろし、嬉しそうに食事を始めた。
ルーカス様は、木陰にひかれたシートの上に案内され、仏頂面で座っていた。
ご一緒するのは近衛隊長のアレクと、もちろん私……。
うう、さっきので気まずい。
「リリア、おいで」
アレクが笑顔でそんな私を手招きするので、私はおずおずと二人の側へ行った。
「リリアも食べよう」
アレクがそう言って広げられたお弁当を指差した。シェフが作ったサンドイッチ。私はこのサンドイッチが大好きなのだ!
ルーカス様のことはさておき、私はアレクの隣にちょこんと座ると、サンドイッチを頬張った。
「しかし、さっきの結界は何ともなくて良かったね」
サンドイッチを頬張る私の横で、アレクがルーカス様に話しかけた。
一箇所目の結界は揺らいでいるものの、欠損も無く、強化を施すだけで済んだ。だから『リリア』の小さな身体でも対応出来た。
修復と強化を同時に行う力はあるけど、この身体が耐えられない。そんな心配は、トロワが払拭してくれていた。
「俺の力を分け与えるから大丈夫だ」
前回、私を倒れさせてしまったのをトロワは気にしているようだった。
でも精霊の手助けがあれば大丈夫そう!
そう思って、今回の無茶なお達しにも楽観的になれたのだ。
「マフィン食わせろー」
ニャーン、とトロワが鳴くので、私はサンドイッチの手を止めて、自分のバスケットに手を伸ばした。すると、アレクと話していたルーカス様が突然こちらを睨んで来た。
「任務に猫を連れて来ているのか?」
あ、これはヤバイやつだ。
そう思った私は、包み隠さず話すことにした。
「えっと、この子は光の精霊です。私と従属の契約をしています」
「えっ……!!」
私の言葉に驚いたのは、アレク。
そりゃそうよね。飼っていた猫が精霊だったなんて。
ルーカス様がじっとトロワを見つめていると、アレクがポロリと言った。
「リリアが可愛がっていたトロワが精霊だったなんて……いやビックリした。リリアの聖女の力が目覚めたからなのかな?」
瞬間、ルーカス様の表情が変わった。
「おい! お前の精霊はトロワというのか?」
……しまった。ルーカス様は『リヴィア』の精霊の名前を知っていた。
「いや、しかしリヴィアの精霊はライオンだった……」
私の肩を掴み、ブツブツと言うルーカス様。
「トロワは私が名付けましたが、何か?」
こうなったら、「偶然です!」感を出すしかないわ。
私はルーカス様の透き通った青い瞳をじいっと見て、平静を装った。
あんなに好きだった優しい瞳が、今は冷たい。
「偶然か……」
「おい、ルーカス、どうした?」
私の思惑通りに、ポツリと呟いたルーカス様にアレクが間に入って、ルーカス様の手を私の肩からどけてくれた。
「何でもない!」
ルーカス様は不機嫌そうに、また元の場所に座り直して言った。
「精霊と従属の契約をしているなら、一人目の聖女より力が強いのは納得だ」
ルーカス様の、『一人目の聖女』という言葉にドキリとする。きっとルーカス様のご婚約者。
「ソフィー様には精霊すら付いていないからな」
「まあ、アイツには期待していない。好きにすれば良いさ」
アレクとルーカス様の会話に、もう一人の聖女様の名前が、ソフィー様だと知る。
それにしても、何だかルーカス様、投げやり…?
「もう一人の聖女様はどんな方なんですか?」
私の何気ない質問に、アレクは困った顔で笑って、「うーん……」と黙ってしまった。
「聖女の仕事もしないで遊んでいるやつだ」
「ルーカス……!」
代わりにルーカス様が教えてくれたが、その言葉にびっくりする。
え?ルーカス様が、ご婚約者様は遊ばせている?
昔のような厳しさを持ち、十歳の私にも厳しく任務を果たせと言うルーカス様が?
「婚約者様を愛していらっしゃるんですね」
「は?」
気付けば私はそんな言葉を発していた。
「だって、ソフィー様には危険な任務に出さず、穏やかに暮らしていて欲しいってことでしょ?」
「まてまて、何を言っている?」
私の言葉に、ルーカス様が珍しく焦っていた。
「厳しいルーカス様がソフィー様だけに甘いのは、婚約者であるソフィー様を愛していらっしゃるからだと」
私の言葉にルーカス様がブルブルと震えていた。
あ、これ、私、またやっちゃった?
「ははは!! そうなるか。そうだよな。リリアは物知りだなあ!」
何故かまたアレクが吹き出している。
「婚約者じゃない!!」
「え?」
震えていたルーカス様は、眉間にシワを寄せて私に言った。あ、何か昔に戻ったみたい。
「ソフィー様は、ジェイル様の婚約者だよ」
お腹を抱えながら、まだ笑っているアレクが教えてくれた。
「え」
とんだ勘違いをしていた私は、ルーカス様をじっと見つめた。
「あんな女を婚約者と間違えられるなんて不愉快だ!」
と言ってプイ、とそっぽを向いてしまった。
何だかそれが可愛くて。私も思わず笑ってしまった。