故意な恋~ある執事の日常~
「そう言わず、あいつが社長として落ち着くまでは傍で支えてやってくれ」
(全く無茶を言う)
だが、どんなことがあろうと槇野は主人の願いを聞き入れる。
「かしこまりました」
「親子共々、苦労を掛けるな」
「いえいえ。私は、この仕事が天職だと思っていますので」
執事にとって、有能な主人に仕えることほど幸福なことはない。
それに、この親子に苦労を掛けさせられるのも悪くはない。
(私も大概、新堂家に魅せられているということか)
ーー槇野が休める日はまだまだ先のようだ。