だから、泣くな

CHERRY BLOSSOM

桜井 side
俺の名前は桜井馨。名前の画数多いし、もっと簡単な名前が良かったなぁなんて思うことも多々ある。
高校1年生の春、俺は1人の女の子に一目惚れをした。それはそれは可愛い子で、すぐにでも自分のものにしたいくらい惚れたんだ。
入学式の呼名の時、彼女の名前が如月奏音だと知った。彼女にふさわしい、美しい名前だと思った。
「馨、さっきから変だけどどうした?」
「なぁ優弥、あの子とお前同じクラスだろ?」
「あの子って…あぁ、如月ちゃんか。同じクラスだけど、まさか一目惚れでもしちゃった?」
「あぁ、めっちゃ惚れた」
俺がそう言うと、優弥はこれでもかというくらい顔をにやけさせた。それはもう、ちょっと引くくらいに。
今まで色恋とか全く興味なかったし、そういう浮いた話が一切なかった俺。そんな俺が入学式で一目惚れしたなんて聞いたら、そりゃあにやけるか。
「馨の一目惚れ話は後から聞くとして、今日の幹部集会で言いたいことあるんだろ?」
「…あぁ、すげぇ面倒なことになってっから、幹部の奴らに伝達しとこうと思って」
「またあいつらか?ほんと懲りねぇな」
「ここでそんなこと言ってても仕方ねぇ。とりあえず、幹部連中に言ってどうするか相談する」
そして俺は、CHERRY BLOSSOMという暴走族の総長なのだ。元々喧嘩は強かったし、最近は暴走族の奴らからも喧嘩を売られることが多くなってきていた。
そこで俺は優弥と2人でCHERRY BLOSSOMという暴走族のチームを作った。総長は俺、副総長は優弥だ。
俺らのチームは負けなしで、売られた喧嘩は全部買う。喧嘩売ってきた奴には容赦しねぇ。
だけど、CHERRY BLOSSOMのメンバーは普段は普通に高校生してるし、学校で喧嘩をしたりはしねぇ。俺らのチームのことがバレると、めちゃくちゃ面倒だからな。
「優弥、そのにやけたツラで余計なことすんなよ。如月さんに変なことしたらぶっ飛ばすかんな」
「大丈夫、何もしないって」
優弥は見た目通りすごいチャラいから、とにかくモテる。彼の周りから女の子が途切れることはないし、彼もまた来る者拒まず去る者追わずだ。
ヘラヘラしている優弥に蹴りを入れたくなったがぐっと堪え、今夜の集会のことを考える。立ち上げてまだ半年足らずのチームだが、上手く統率が取れている気がするし。
メンバー全員、ちゃんと晴れて高校生になれたわけだし、しっかりやっていかねぇとな。
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