だから、泣くな
第一章

救世主

「奏音、おはよう」
「おはよう、今日も麗奈は綺麗にメイクしてるね」
「何言ってんのよ。私はメイクしないとすっごいブスだからしてるの。奏音はメイクしなくても可愛いから羨ましいわ」
「そんなことないよ。厚塗りのメイクしてるだけ」
麗奈と私は家も近く、いつもの場所で待ち合わせてから学校へ向かう。ひとりだと絶対に突破できそうにない校門も、麗奈と話しながらだと意外とすんなり突破できるものだ。
「今日こそはいじめられませんように…」
「奏音がいじめられたら、私が助けるから大丈夫よ。だから、何かあったらすぐ言ってよ?」
「ほんっと、麗奈は心強いなぁ〜。私にはそんな度胸ないよ」
「だってムカつくじゃん、あいつら。いじめとかマジ最低だし、人として終わってるわ」
そう言って、私の分まで怒ってくれる麗奈。私も心の中ではそう思っているけど、それを口に出したら最後、今日はあいつらの気が済むまでとことんいじめられるだろう。
いじめっ子たちが早くいじめに飽きてくれますようにと願いながら登校するも虚しく、下駄箱の中に私の靴がなかった。もういつものことだし慣れている私は、カバンから予備の上靴をとりだす。
上靴を隠される度に買っていたらキリがないし、学校指定の上靴だから指定されたお店で買うしかない。そんなに頻繁に買いに行ってたら怪しまれて学校に報告されかねないし、最近では予備の上靴を用意して持ち帰ることにしている。
たまに部活とかで遅くなって持ち帰るのを忘れた時は、もちろん上靴がなくなるんだけどね。
「あれ、如月さんじゃない。今日も懲りずによく登校して来るわね。私なら絶対無理よ」
「ほんとにね。あんだけいじめられても登校して来るなんて、感情ないんじゃないの?」
「たしかに!表情も固いし、笑ってるとこ見たことないし」
「あんたらこそよく飽きないね?てか、毎日毎日よくいじめのネタ持ってくるよね」
「麗奈ぁ、お前は黙ってろよ。こんな感情ない人間とよく毎日一緒にいられるな?」
「あんたらが奏音のすごさ知らないだけだし。それに、私が誰といようとあんたらには関係ないでしょ?」
「はいはい、そういうのいいから。学校来んなよゴミ」
この人たち、日本語通じなすぎる。話全然噛み合ってないし、よく次々悪口が出てくるよね。
朝から麗奈に嫌な思いさせちゃったな。私と居なければ、こんな思いする必要もないのに。
「奏音、あんた今変なこと考えてる」
「別にそんなことないよ?」
「私は一生あんたの隣にいるんだからね。勝手に親友やめるとか言い出したらキレる」
「何それ、プロポーズみたいだね」
「ほら、一限移動だしさっさと行こ?」
あぁ、この人が親友で良かったなって心から思うよ。
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