だから、泣くな
今日も死ぬほどいじめられて、散々な目にあった。思い返すだけで吐き気を催すけど、自然と頭の中に蘇ってくる。
一番キツかったのは、トイレをしている時に個室の上からバケツの水をかけられたこと。全身びしょ濡れだし臭いし、本当に最悪だった。
「なんでこんなことされるんだろ…」
旧校舎の図書室の窓から外を眺め、ボソッと呟く。学校の中で私の居場所はこの旧校舎の図書室だけだ。
ここならいじめっ子たちにもバレてないし、のんびりと過ごすことができる。それに本もそのまま放置されているものが多く、本好きの私が時間を潰すにはこれ以上ない程の場所だった。
「麗奈が来るまで少し寝ようかな…」
私の心とは裏腹に、今日の天気は快晴。程よい太陽の光を受け、私は微睡んでいた。
この学園にいる間は、私に平穏なんて絶対に訪れない。きっと、卒業までいじめ抜かれるのだろう。
あと2年の辛抱だと思ってはいるが、2年間も我慢できる自信はあまりない。来年、麗奈とクラスが離れてしまったらそれは文字通り絶望を意味する。
クラス替えはまだまだ先なのに、同じクラスになりますようにって今から神頼みをしているのだ。
「やったー、空いてんじゃん!誰もいないとかラッキー!」
「ほんとだ、穴場じゃーん!」
ごちゃごちゃと考え事をしていると、急に女子生徒の声がしてビクリとする。今いるところは幸い入口から離れているし、音を立てないようにそっと隠れる。
「つーか、マジあの女ムカつくんですけど!」
「分かる、あの存在がもう無理。もう早く死んで欲しいし」
この声、顔を見なくてもわかる。私をいじめているいじめっ子たちの声だ。
旧校舎に来たことなんて今まで一度もないのに、なんで今日に限って来るんだろう。これから、ここでのんびりする時間すら許されないのか。
「如月ってなんであんなにムカつくと思う?」
「え、やっぱ存在?なんかさ、あんなボサっとしてんのに男子に可愛いとか言われてんのうざくね?」
「可愛いとか言われてんのに、誰にも助けてもらえてないのもめっちゃ面白いよね〜」
「正義感強すぎるしね。正義のヒーローかよって思うもん」
「わかる!困ってる人はみんな私が助けますみたなのうざいよね!」
「今日のはマジ傑作だったわ。ずぶ濡れんなってるあいつ見たら、スッキリしたし」
この人たち、自分が何を言ってるのか分かって言ってるのかな。てか、私可愛いって言われたことないしね。
まぁ、可愛いとか言われても彼氏とか作る気ないんだけどね。あいつらから変な恨み買うのもやだし。
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