だから、泣くな
「あの、桜井くん!」
「あ?なんだよ」
「如月とどんな関係なのよ!なんでそこまで庇うのか教えて!」
あ、たしかにそれは私も気になってた。桜井くんと関わったことない気がするんだけどなぁ。
もしかして、知らず知らずのうちに何か接点があったりして。いやいや、私みたいな陰キャと関わりがあるなんて絶対ない。
「お前らに教える必要なくね?」
「でも、気になるし…」
「桜井くんみたいな人が、如月のこと気にかけるなんてちょっと不思議っていうか…」
「うるせぇな。お前らには関係ねぇって言ってんだろ」
桜井くんにそう言われ、いじめっ子たちはそれ以上何も言えなくなってしまった。そして、ごめんなさいと謝りながら、図書室を後にした。

何が起こったのか未だに情報整理が追いついていないが、何はともあれ明日からは少し安心(?)できそうで良かった。あれだけ言われて更にいじめてきたら、どんだけ図太いんだよって思うし。
とりあえず、桜井くんに気づかれないうちに図書室を出よう。見つかったら、面倒くさいことになりそうだし。
「如月さん、そこにいるのバレバレだから」
「え、なんで!?」
「なんでって、頭チラチラ見えてたし。俺、ここでよく昼寝してるからいつも来てることも知ってる」
「そうなんすね…」
「てか、固まりすぎじゃない?顔真っ赤だし、目泳いでるし」
「そんなことないですよ…ほんとに…」
「ふーん。ね、俺の目見て違うって言ってみてよ」
「絶対無理です。ていうか、なんで私のこと庇ってくれたんですか?私たち、初対面ですよね」
「え、初対面じゃないよ?」
「…はい?」
「だから、初対面じゃないって。入学式ん時、俺のこと助けてくれたじゃん」
「入学式…あぁ!!」
「あれ俺。まさか、今まで気づかなかったの?」
「うん、人の顔覚えるの苦手で…」
思い出した、入学式の時に道に迷ったとかで学園までの道案内してあげた男の子いたっけ。すごい美形だなぁって思ってたけど、まさかあれが桜井くんだったとは。
「如月さん、すごくいい子だからいじめられてるの許せなかった。もっと早く助けてあげられなくてごめんな」
「いいんです。これは私の問題だし、親友の麗奈って子が──」
「奏音!大丈夫だった!?」
「麗奈、私は大丈夫だよ。いつもありがとうね」
「…何この男。奏音のことたぶらかしに来たならさっさと帰ってください」
「んー、ちょっと違うけどまぁいいや。"またね"、奏音」
含みのある笑みを私に向け、桜井くんは図書室から出て行った。あの顔、何か企んでそうな顔してたな。
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