敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
タオルで手を拭い、螺旋階段を上っていく。二階部分には寝室と書斎のふた部屋があり、昨夜の話によれば寝室が左側だと言っていた。
ノックをして声を掛ける。
「聖さん、そろそろ起きる時間ですよー」
ところが応答はない。
「聖さん、開けますね」
ひと言断り、ドアを開ける。
二十畳近くあるだろうか、グレーの落ち着いた色調でまとめられたすっきりとした寝室だ。真ん中にキングサイズのベッドが大きな存在感を放ち、その真ん中が人型に盛り上がっている。
「朝ですよー」
ベッドに近づき、頭まで毛布を被っている聖の肩付近をツンと突く。
「……ん」
ようやく反応らしきものが返ってきた。