敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~

つまり血の繋がりのない成人男性の上半身を生で見たのは初めてになる。
いつまでも消えない残像を振り払うべく頭をぶんぶん横に振る。


「なんの運動?」


身支度を終えた聖がやって来た。七緒の不可解な仕草にクスクス笑いながら即行でツッコミが入る。


「……なんでもありません」


取り澄ましてテーブルにつき箸を持つ。

今朝の聖はネイビーのシンプルなカットソーとグレーの細身のパンツを合わせていた。腕に掛けていたベージュの麻ジャケットを隣の椅子に置く。

医者の通勤着はビジネスマンのようにスーツではないようだ。そういえば京懐石を食べたときも病院帰りだったが、似たようなスタイルだった。


「聖さんもどうぞ」
「朝からすごいご馳走だな」


テーブルに並んだ料理を前に、聖はため息交じりに呟いた。
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