敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「加賀谷先生、私が誰だかわかりませんか?」
「申し訳ありません。どこかでお会いしたでしょうか?」
必要以上に目をパチパチとしばたかせて聖を見つめる患者に首を捻る。
「十日ほど前に、あるパーティーで」
そのヒントでようやくわかった聖は、またたく間に顔から表情を消し去った。
七緒を傷つけた略奪女だ。
「思い出してくださったんですね。うれしい」
聖の冷たい目にも怯まず、恵麻は両手を握りしめてにこやかに笑い返した。
「今日はどういったご用件でしょうか」
抑揚をつけず淡々とした口調で問いかける。
「どういったって、問診表にも書きましたが胸が苦しいんです。それでぜひ加賀谷先生に診てもらいたくて」