敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
恵麻は胸を押さえて、いかにも苦しいといった表情を浮かべた。
とてもそうは見えず、小さく息をついてカルテに向きなおる。
「申し訳ありませんが、あなたの遊びに付き合っている時間はありません」
なにをしにここへ来たのか知らないが、この女にかかわっている暇はない。そもそもあのパーティーで聖にさんざんこき下ろされたというのに、よくここまで来られたものだ。
いや、図太い神経だからこそ、人の恋人を奪えるのだろう。
お引き取り願うつもりで冷たく突き放したが――。
「お医者様なのに患者を見捨てるんですか?」
恵麻も簡単には引き下がらない。捨てられた猫みたいにすがる目つきで聖を見る。
至極まっとうなことを言われれば、聖もそれ以上は突っ撥ねられない。
「嘘じゃないんです。本当に動悸がして」