敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~

「どれだけふざければ気が済む?」
「ふざけてなんていません。私だってびっくりしたんですから」
「最初から妊娠してなかったんじゃないのか」


そうだとしか思えない。七緒から完全に奪うために一芝居を打ったのではないか。


「ひどいです」


目元に手をあて、泣くような仕草をする。


「ともかくキミの心臓はなんともない。毛が生えている疑いはあるが」
「毛? どういう意味ですか?」
「自分の胸に手をあてて考えてみたらいい。診察は以上。お大事に」


今度こそ退室してもらおうと手の平を上にしてドアのほうを差す。


「私で診察は終わりですよね?」


彼女を訝しげに見たら、「どうして知ってるんだって顔ですね」と楽しげに笑う。
< 221 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop