敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~

「加賀谷先生のお時間の一番最後の予約にしてくださいってお願いしたんです。これからランチをご一緒しませんか?」


意味のない診察の次は食事ときた。


「……キミはいったいなにを考えているんだ」
「先生とお食事がしたいんです」
「婚約者がいる人間の振る舞いとは思えないな」
「彼とは正式に婚約していませんから。……というか、結婚はしないので」


恵麻が次から次へと耳を疑う言葉を並べる。

聖はデスクに片方の肘を突き、彼女を呆れ返った目で見た。胸の奥から嫌悪の塊が込み上げて吐きそうになったが、大きなため息でかわしてやり過ごす。


「悪いが、俺はキミが嫌いだ」
「そんなにはっきり言わないでください」
「はっきり言わなければキミはわからないだろう」
「でも先生、知ってますか? 嫌いっていう感情は好きに変わりやすいんです。ちょっとしたきっかけでコロッと」


つくづく虫唾の走る女だ。七緒の元彼が、なぜこんな女に引っ掛かったのか理解に苦しむ。

恵麻は手を返す仕草をして屈託のない笑みを浮かべ、さらに続ける。
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