敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~

「私がいい例ですもん。パーティー会場で先生に一喝されたときには頭にきたけど、そうして叱ってくれる人は初めてだなって考えていたら好きになっていました」


だから彼とは結婚しないというのか。
呆れるのを通り越して、恵麻の思考回路が心配になる。脳神経外科の一弥にカルテを回してやろうかと本気で考えた。


「キミと話していると頭がおかしくなりそうだ」
「それは私を好きになる兆候じゃないですか?」


口元に手をあててふふっと笑う。気味が悪い。


「それに七緒さんより私のほうが有益です。私の父、アオヤマ製薬の取締役を務めているんです」
「アオヤマ製薬?」


加賀谷医療センターにおいて最も取引の多い製薬会社だ。日本国内におけるシェアでもトップクラス。その取締役ときた。


「新薬を優先的に調達したり、加賀谷先生に講演依頼という形で資金を提供したり、病院のためにも先生のためにもおいしいと思いませんか? 私が父におねだりすれば簡単ですよ。七緒さんとの結婚を考えているのなら、私に乗り換えたほうが断然お得です」
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