敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
まるでスマートフォンのキャリア乗り換えを勧めるCMみたいだ。
「さも素晴らしい話をしているよだが、その気はない。とにかく診察は終わったんだから帰れ」
先ほどから看護師がチラチラと診察室を覗きにきており、なんの揉め事かと心配そうにしていた。
「ちょっ、待ってってば」
「二度と顔を見せるな」
聖は恵麻の腕を掴んで立たせ、ドアを開けて追い出した。
稀に見る悪女と対峙し、どっと疲れが出てくる。胸糞悪いとはこのことだ。
看護師に「騒がしくして悪かった」とひと言謝り、医局へ足を向けた。
もしかしたら七緒の元彼も、なにかしらの手段を使って奪ったのではないか。あんなにアクの強い女に心変わりするなど考えられない。
反吐が出るほど不愉快な気分を抱えて歩いていたら、不意に呼び止められた。
「加賀谷先生」