敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
父親に叱られ、恵麻の頬が盛大に膨らむ。まるで幼い少女のよう。
「娘がここまでわがままに育ったのは、欲しいと言われれば与えてきた私の責任であり、お恥ずかしい限りです」
山下は「本当に申し訳ありませんでした」と再び腰を折った。
今ひとつ状況は掴めないが、聖が彼らをここへ呼び出したようだ。恵麻に電話をかけてきた父親の声が興奮気味だったのは、聖からなんらかの連絡がいったせいだろう。
「あなたの娘さんが、二度と私たちの前に現れないようにしていただけるのでしょうか」
「それはもちろんです。私が責任をもってお約束いたします」
聖の確認に山下が即座に返す。なにがなんでもといった強い決意が真剣な目から感じられた。
「具体的にはどのようにしてですか?」
「アオヤマ製薬の工場が熊本にありますので、そちらで働かせます。監視もつけますのでご心配には及びません」
「熊本の工場!? 監視ってなに!? ちょっと待って、パパ!」