敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~

「わかっています。ご足労いただきありがとうございました」


最後にもう一度頭を下げた山下がカンファレンスルームから立ち去り、恵麻の泣き声がどんどん遠くなっていく。エレベーターに乗ったのか、直後にぴたりと聞こえなくなった。

終始驚き通しで言葉も発せなかった七緒は、そこでようやく肩から息を吐き出す。


「大丈夫か?」
「はい。ちょっとびっくりしましたけど」


いったいどういう経緯でこうなったのか。未だに七緒は混乱中である。


「彼女の父親が取締役をしているアオヤマ製薬は、この病院で一緒に働いている俺の友人の父親の会社なんだ」
「聖さんのお友達のお父様が社長?」


聖が深く頷く。アオヤマという社名でピンときた。


「もしかしたら雪菜さんのお兄様ですか?」


 唯斗たちの婚約披露パーティーのときに七緒を華麗に変身させてくれた雪菜と、場所を提供してくれた一弥を思い出した。
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