敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「察しがいいね」
彼はここの脳神経外科医らしい。
「彼女の言動があまりにも目に余ったから裏の手を使わせてもらった。容赦はいらないと思ってね。目には目をってやつだ」
一弥を通じ、アオヤマ製薬の社長から彼女の父親に圧力をかけてもらったという。アオヤマが資金援助を謳った賄賂をいかにも推奨しているような発言は、取締役の娘といえど放っておけないと、すぐに動いてくれたそうだ。
「そうだったんですね」
「さすがに頼みの綱の父親からああ言われれば、彼女も態度を改める以外にないだろう」
今までわがままの限りを尽くしてきただろうが、これからはそうはいかない。熊本の工場で真面目に働いて、せめて少しは改心してくれたらと願う。
「いろいろとありがとうございました」
聖に出会えていなかったら七緒は恵麻にやられ放題で、今頃まだ家に引きこもっていただろう。心の奥に重いものを抱えたまま悶々と過ごしていたに違いない。