敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
聖の心がそこにあれば、どこでプロポーズをされようと関係ない。
「いいこと言うね。でも仕切りなおすぞ。週末、ふたりでロマンティックな夜を過ごそう」
「そんなのいいのに」
「そんなのってなんだよ。人生でたった一度のプロポーズだぞ? とびきりの夜にするから覚悟しておけ」
「なんで宣戦布告みたいになってるんですか」
クスクス笑う七緒に聖がハッとする。
「ほんとだな」
ふたりで笑い合い、軽く唇を重ねたところで部屋のドアがノックされた。
そそくさと離れ、取り澄まして座りなおす。
「失礼します。加賀谷先生、急患です」
看護師が差し迫った表情で顔を覗かせる。
その瞬間、聖から放たれる空気がピリッとしたものに変わった。
「わかった。すぐに行く」
看護師にそう答え、すぐに立ち上がる。
「七緒、呼び出しておいて悪いな」
「いえ、頑張ってくださいね」
聖は軽く手をあげ、白衣をひらりと翻してカンファレンスルームを出ていった。