敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
プロポーズは出会ったあの場所で
聖にプロポーズの仕切りなおしを提案された数日後の土曜日。
七緒はとある高級ホテルへやって来た。
グランビューレの社長である若林江梨子に会うためだが、今夜はこのホテルで聖と過ごす予定でもある。
江梨子から連絡があったのは昨夜のこと。会って話がしたいと言われ、待ち合わせ場所に指定されたのが偶然にもここだった。
聖ともラウンジで待ち合わせをしたため、江梨子を見送ったら時間までゆっくりスイーツでも食べて待とうと考えている。
エレガントな雰囲気に溢れた一階のロビーは優雅な時間が流れ、なんとなく背筋が伸びるような空間だ。
一泊する予定のため小さな旅行バッグに荷物を詰め、フェミニンなシルエットのティアードワンピースを着てきた。
脇にあるラウンジでひと足先にオレンジジュースを飲みながら待っていると、ほどなくして江梨子は現れた。今日もアイボリーのパンツスーツの着こなしは抜群だ。
「久世さん、お待たせ」
「社長、こんにちは」
いったん立ち上がって頭を下げ、江梨子に促されて腰を下ろす。