敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
料理の楽しさやおいしく作るコツを自分も教えたい。そう思ったのが講師になったきっかけだ。
その楽しさを、これまで以上に多くの人たちに伝えられる。そんなチャンスは、江梨子の話を逃したら二度とないかもしれない。
今回の話は、立派な医師である聖の隣に立っても恥ずかしくない自分になるための第一歩になり得る。
顔をぐっと上げ、江梨子を見た。
「社長、その話、ぜひお受けしたいです」
「そう! 久世さんなら絶対に引き受けてくれると思ったわ。それじゃ、これをちょっといいかしら」
江梨子は意気揚々とクリアファイルから出した資料の説明をはじめた。
今回の番組のコンセプトや収録のスケジュール、どのような料理を展開していくのかなど、初日にしては多くの情報を七緒に提示していく。
「もっと詳しい話は、今度プロデューサーの方とお会いしたときにしましょう」
「はい、よろしくお願いします」
「久世さんの活躍、私も楽しみだわ」
説明に夢中になっていた江梨子が、すっかり冷めきったコーヒーに口をつけたときだった。