敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「七緒」
後ろから掛けられた声に振り返る。声で聖だとわかったため、つい顔が綻んだ。
「聖さん、もうお仕事終わったんですか?」
待ち合わせより一時間も早い。
「そうなんだ。週明けにある手術のカンファレンスが思いのほか早く終わってね。それでこちらが……」
聖の目線が七緒から江梨子へ注がれる。――瞬間、江梨子は 唖然とした様子で彼を凝視した。
「聖……?」
目を見開き、彼の名前を呼んだ。手にしていたカップを大きな音を立ててソーサーに置く。
(社長、聖さんと知り合いなの?)
七緒はポカンとして江梨子から聖へ目を向けた。しかし聖の表情も七緒と似たようなもの。見ず知らずの人を見る目だ。
「あの、こちらは若林江梨子さんで――」