敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「若林江梨子……?」
ポツリと呟いた聖の表情が豹変する。眉根を寄せ、信じられないといった様子で首を横に振った。
「聖さん? お知り合いなんですか?」
七緒がそう尋ねた刹那――。
「っ……!」
江梨子が胸を押さえて急に苦しみはじめる。
「社長!? どうされましたか!?」
ガタンと椅子を鳴らして立ち上がり江梨子の背中に手をあてるのと、聖が彼女に駆け寄るのとは同時だった。
彼女の顔は苦悶に満ち、どんどん青ざめていくいっぽう。
(どうしよう!)
焦る七緒と対照的に、聖は落ち着き払った様子で江梨子に問いかける。