敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~

横幅もある地上七階の大きな建物は亜麻色の外観のおかげか物々しい雰囲気はなく、近くに広がる公園の清々しい緑に無理なく溶け込んでいる。

総合受付のあるロビーで手続きを済ませ、案内板を頼りに内科を目指す。週明けのため患者でいっぱいだ。

七緒は風邪をひいたときには近所のクリニックを受診するため、ここへはめったに来ない。総合病院は混雑して待ち時間が長いイメージがあるため余計だ。

内科のロビーは、これまたたくさんの患者がひしめいていた。

(どこか空いてる椅子はあるかな……)

ゆっくり足を進めながら席を探しているときだった。


「あれ? 七緒さんじゃないか?」


突然名前を呼ばれて足を止める。自分とはべつの七緒かもしれないと思いつつ声のしたほうに顔を向けると、そこにいたのは白衣姿の利幸だった。


「こ、こんにちは。昨日は大変失礼いたしました」
「いえいえ、こちらこそ楽しい時間を過ごさせてもらいましたよ」
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