敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
(聖さん、ごめんなさい。やっぱり私じゃダメかも……)
利幸の言葉を待つ、ものの数秒のうちに悲観に暮れる。お見合い回避作戦が失敗に終わろうとしていた。ところが……。
「それなら聖の世話をお願いできないかね?」
利幸は穏やかな微笑みを七緒に向けた。
「……はい?」
どうやら〝破局〟とは違う方向に向かっているようだ。お世話とはいったいなんだろうか。
「マンションでひとり暮らしをするようになってから、どうもひどい食生活を送っているようでね」
ひとり暮らしで食生活が乱れがちになるのは男性に限らないかもしれない。ひとり分だと面倒で、つい適当に済ませたくなる。
いくら料理が好きとはいえ、もしも孝枝が一緒でなかったら七緒も怪しい。誰かに食べてもらえるからこそ作り甲斐があるから。