敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「聞けば、七緒さんは料理教室の講師を務めていたそうだね」
「あ、はい、一応は」
「いっそ聖の部屋で一緒に暮らしたらどうだい?」
「はいっ!?」
七緒の声が裏返る。目が飛び出るかと思った。
「どのみち結婚する予定なら、遅かれ早かれそうなるわけだし」
「そ、それはそうかも、しれないのですが……。でもまだわからな――」
「別れる未来もあるなんて言わないでくれたまえ。七緒さんには、ぜひ聖と結婚してもらいたい。孝枝さんの孫娘なら間違いはないというものさ」
七緒の肩に手をのせ、利幸が強い視線で見つめてくる。あまりの勢いにタジタジになりながら、七緒は困惑いっぱいだ。
それならハウスキーパーにでもお願いして作ってもらえばいいのにと、つい考える。お金に余裕があれば可能だろう。
「家政婦を送り込んでみたんだが、他人を部屋に入れたくないの一点張りでね」
まるで七緒の頭の中を見透かしたかのよう。