敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
大きくため息をつき、男性が首を横に振って続ける。
「まぁここから泳いで逃げたいのはやまやまだけど」
「……逃げたい?」
一部分に耳が反応する。理由はわからないが七緒と同じ人間がここにもいた。
聞き返した七緒を見た数秒後、彼がパッと顔を輝かせる。
「名案を思いついた」
なにかを企むように目を細める。
(名案ってなに? グッドアイデアじゃなくて悪だくみに見えるんだけど……?)
わけもなく不安に駆られ、じりっと一歩後ずさりをした。
「キミを俺のフィアンセに仕立てよう」
「……はい?」
(フィアンセに……仕立てる? ……私を?)