敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「今頃気づいた?」
得意げな様子はむしろ清々しいほど。彼の言い方や振る舞いが嫌味でないからなのか。
「自信があるんですね」
「自分のことは自分で褒めるスタンス」
「素晴らしい自己愛ですね」
「七緒もそうしたほうがいい。気持ちが自然と上向くぞ」
まるでさっきの料理教室での一幕を実際に見て、励ますかのような言葉だ。もちろんそんなわけはなく、彼の信条みたいなものだろう。
「だけど七緒の俺に対する好意的な意見は初めて聞いたな」
「そうですか?」
「二重人格だって言わなかったか?」
「……ごめんなさい」
一昨日の自分を思い返してヒヤッとする。出会って間もない人に失礼な発言なのはもっともだ。
「今日はずいぶんと素直だな」
「私は基本的に素直なんです」
「そうそう、その調子だ。どんどん自分を褒めていこう」