敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
「そう、七緒さん」
「はじめまして。久世七緒と申します」
話がどう通っているのか定かではないが、ひとまず自己紹介をする。
「七緒、こちらは日向美奈子さん。亡くなった俺の父の妹さんなんだ」
ということは彼の叔母にあたる人だ。
「お父さんから、結婚したい女性がいると聖に紹介されたって聞かされたときには本当にびっくりしたわ」
彼の祖父ばかりでなく、叔母にまでそんな話が伝わっていて驚かされる。
ここはそれらしく振る舞わなければならないと背筋が伸びた。
「聖もようやく結婚を考えるようになったのね」
「まあそろそろね」
適当に相槌を打ちながら、美奈子に案内されて通路を進む。店内は和紙で覆われたペンダントライトがやわらかなオレンジ色の光を放っていた。