敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~

小上がりになった場所で靴を脱ぎ、障子を開いた先にある和室に通される。向かい側にはライトアップされた箱庭が見えた。
一坪くらいだろうか。こぢんまりとしているが、玉砂利が敷かれ、紅葉しているように見えるノムラモミジが美しい。

七緒たちはテーブルに向かい合って座った。


「父と、七緒さんのおばあ様とは同級生なんですってね」
「そうなんです」
「お見合いで引き合わせる前に出会っていたなんて運命的ね」


クルーズ船での顛末もしっかり聞いているみたいだ。真実はもちろん、聖と七緒以外には知る由もないだろうが。

聖によれば、その話が利幸から美奈子の耳に入り、美奈子から聖に直接連絡が入ったと言う。七緒に『ぜひ会わせて』と。
今日ここへ来たのは美奈子に請われてらしい。


「七緒さん、聖をどうぞよろしくね」
「は、はい……」


当然ながら〝いいえ〟とは言えず、頭を下げて恐縮する。
美奈子はふたりにお茶を出して、料理の相談をしてから個室を去った。
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